私家版1999年ミステリベスト

順位書名作者出版社・形態読了月
1位プリズム貫井徳郎実業之日本社10月
2位念力密室!西澤保彦講談社ノベルス1月
3位法月綸太郎の新冒険法月綸太郎講談社ノベルス5月
4位象と耳鳴り恩田陸祥伝社12月
5位ハサミ男殊能将之講談社ノベルス8月
6位そして二人だけになった森博嗣新潮社8月
7位盤上の敵北村薫講談社8月
8位堕天使殺人事件新世紀「謎」倶楽部角川書店9月
9位放浪探偵と七つの殺人歌野晶午講談社ノベルス7月
10位夜宴愛川晶幻冬舎ノベルス12月
次点QED 六歌仙の暗号高田崇史講談社ノベルス6月
次点ドッペルゲンガー宮霧舎巧講談社ノベルス7月
対象は1999年1月から12月にかけて刊行されたもの
 1999年ミステリベストは、狭義の本格ミステリに拘ってみました。1位、2位、3位はほぼ不同ですが、4位以下はその日の気分によってコロコロと変わる可能性大。また、気分次第で『QED 六歌仙の暗号』は『どんどん橋、落ちた』(綾辻行人/講談社)に、『夜宴 美少女代理探偵の殺人ファイル』は『夜想曲(ノクターン)(依井貴裕/角川書店)に差し変わります。なお、『どんどん橋、落ちた』は初出で全部読んじゃったために本になったのは読んでません。本自体が手元になかったりして(笑)。そういえば、『盤上の敵』も雑誌掲載分を読んだので本が手元にない。
 しかし、『プリズム』を連作短編集と捉えると(長編と見れなくもない)、1999年は短編集が豊作だった年だったといえるでしょう。密室の概念を根本的に覆す『念力密室!』を皮切りに、二月三月は創元推理文庫から鮎川哲也の傑作選、『五つの時計』と『下りはつかり=xが刊行され(年末には「鬼貫警部全事件」全三巻、『碑文谷事件』『不完全犯罪』『夜の訪問者』も刊行)、『法月綸太郎の冒険』でのりりんカムバック、『動く家の殺人』(歌野晶午/講談社文庫)で退場した信濃穣二の事件簿『放浪探偵と七つの殺人』も出たり(特に「水難の夜」は、立ち読みする価値あり。眼目は袋綴じの前にあり!)。短編の収穫にはアンソロジー『大密室』(新潮社)と『贋作館事件』(芦辺拓編/原書房)を加えても良いかもしれない。もっとも、前者は入ってる短編よりはむしろ各作者のエッセイの方が収穫かもしれないが。純然たるミステリと言うわけではないが、『巷説百物語』(京極夏彦/角川書店)は意外とミステリとしての結構もきちっとしていた。あと、『名探偵の肖像』(二階堂黎人/講談社ノベルス)は巻末のカー関連の対談、エッセイがカー初心者には有効か。
 長編と言えば、犀川&萌絵シリーズも完了し、もう文庫でええわと思い買わなかったシリーズ外のノンシリーズ『そして二人だけになった』はネット上で悪い評判を聞かなかったので借りて読んでみたらかーなーり面白かった。『すべてがFになる』(講談社文庫)と並べても全然遜色がない代表作。今年幻冬舎から出るらしい新刊は要チェック、かも。
 色物系新本格と密かに読んでいたメフィスト賞からパズラーが立て続けに出た。『ドッペルゲンガー宮《あかずの扉研究会》流水館へ』と『ハサミ男』。前者は意地の悪い見方をすれば新本格のスピリットだけ、と言う言い方も出来るが二作目に期待大。後者は、サイコパズラーだが、あれよあれよという間に……。二作目の『美濃牛』の刊行が待たれる。ここでメフィスト賞は軌道修正でもするのかなあ。
 愛川晶氏の看板シリーズの一作目も出たし、第三の波((C)笠井潔)初のリレー小説『堕天使殺人事件』もなかなかいい出来だったし(現在「KADOKAWAミステリ」(角川書店)連載中の『前夜祭』も楽しみだ)、陸ちゃん(なれなれしぞ)もハイレベルな短編集『象と耳鳴り』を出したし。良い本格読書生活が送れたようです。世紀末も良い本格が読めますように……。と締めてしまっても良いが、ホラー系も結構読んでるのでそっちも触れようかな。

 ホラーじゃないけれども、昨年復刊された『宝石泥棒』(山田正紀/ハルキ文庫)は、ミステリ読み必読のSF。
 というわけで、ホラーに戻るとホラーの方もミステリ同様短編集の収穫が少なくないかも。異形コレクションも、『グランドホテル』『時間怪談』『トロピカル』『GOD』『俳優』(う、感想まだ書いてねえ)、『世紀末サーカス』(未読)と順調に出たし、祥伝社文庫からは『さむけ』と言うアンソロジーも出た。年末は『忌まわしい匣』(牧野修/集英社)も出たし、ホラー小説大賞の大賞は短編だし(『ぼっけえ、きょうてえ』(岩井志麻子/角川書店)は表題作以外未読)、短編賞佳作の『お葬式』(瀬川ことび/角川ホラー文庫)は意外な拾いもの。『蘆屋家の崩壊』(津原泰水/集英社)も忘れちゃいけない。異形コレクション監修者井上雅彦も異形博覧会III怪物晩餐会』(角川ホラー文庫)を出した。クトゥルーとナチスの融合『邪神帝国』(朝松健/ハヤカワ文庫JA)も出た。クトゥルー繋がりで『秘神−闇の祝祭者たち−』(朝松健編/アスペクトノベルス)も挙げておく。をを、こんなに収穫があ! 純然たる新刊ではないが、日下三蔵氏が編纂した小松左京の短編集は、『くだんのはは』を皮切りにホラーで何冊か出てるようだし。
 長編も異形コレクションから派生した《異形招待席》も刊行。『死の影』(倉阪鬼一郎/廣済堂文庫)と『リアルヘヴンへようこそ』(牧野修/廣済堂文庫)はホラーファン必読、かも。この二人、昨年は本出しすぎ! と言うぐらいに本が出た気がするぞ。倉阪氏はエッセイ集を皮切りに、『死の影』、『田舎の事件』(幻冬舎)、『緑の幻影』(出版芸術社)、『白い館の惨劇』(幻冬舎)と来た。彼のページの著作リストを見ると、短編も本になるぐらい溜まってるようだ。また、牧野氏は刊行順は異なるが『スイート・リトル・ベイビー』(角川ホラー文庫)、『偏執の芳香――アロマパラノイド』(アスペクト)、『忌まわしい匣』の三冊。今が旬、ということか。長編デビュー作が近日文庫落ちするようである。ホラーではなく、ファンタジーだけれども。
 ホラー小説大賞落選と言うことで話題になった『バトル・ロワイアル』(高見広春/太田出版)は、言うほどグログロ陰惨なものではなくまさに青春殺し合い小説とでも言うべきであろう。まあ、この作品が「ホラーじゃない」と言う理由で落とされるならだーれも文句言わなかったんだろうけどねえ(少なくとも私は言わない)。『スイート・リトル・ベイビー』へのコメントも誰とは言わないが、わけわからんこと抜かしてたしなあ。ホラー大賞落選ということで、ここで触れておきました。同じ設定の『クリムゾンの迷宮』(貴志祐介/角川ホラー文庫)を選考委員はどう思ってるんだろう。8人以上殺してないので、良いのか?(笑)。同じ作者の『青の炎』(角川書店)は倒叙もの。今一ピンとこなかった。
 異形コレクションが売れてる事に起因するのかどうかは知らないが、井上雅彦氏の作品が三冊復刊。『ディオダティ館の夜』(幻冬舎文庫)、『妖月の航海』(ソノラマ文庫NEXT)、『異人館の妖魔(ファンタズマ)(同)。ホラーブームの余波か、『凌辱の魔界』(友成純一/幻冬舎アウトロー文庫)や、薄幸だったらしい連作『魔術戦士マジカル・ウオーリアー)(1)蛇神召喚』(朝松健/ハルキ文庫)が捲土重来を期待して再開。
 ホラー系も昨年は充実してたようである。

 しかし、ほぼ書名の羅列じゃないのかっつーきもするが、気のせいにしておこう。
 ――今年もおもろい本に巡り会えますように。