『月曜日の水玉模様』 『悪を呼ぶ少年』
『秘密』 『屍鬼』
『殉教カテリナ車輪』 『ホット・ロック』
『侵略!』

月曜日の水玉模様 加納朋子 集英社 1600円

 「小説すばる」に不定期的に連載されていたものを一冊に纏めた短編集である。最後に仕掛けはないものの物語がリンクしていくいわば連作短編集。作者のOL生活を元に作られたと思われる作品である。各編紹介しよう。

「月曜日の水玉模様」
 通勤電車では長く乗っていると場所というものが出来る。陶子の“場所”もそう言ったものであった。目の前にいる男は曜日によってネクタイの色を決めていた模様。そんなある日会社の近所で連続盗難事件が発生しネクタイのローテーションが狂ってる男に陶子は疑いを持つものの……
「火曜日の頭痛発熱」
 通勤電車の中で風邪をうつされたらしい陶子。しかしそこはしがないOL。重度の風邪でもないので休むわけには行かない。そういうわけで会社の病院に行くがそこで処方してもらった薬を間違えて他の人間のものを受け取ってしまう。陶子が間違ったのは萩のものであったが萩の薬は陶子のものであるはずが陶子のものではなく別の人間のものであった。
「水曜日の探偵志願」
 真夜中の衝突音。そして水曜日。萩がいつものごとく電車の中で居眠りをしていると女子高生がこぼした弁当がかかってしまうもののかかっていない男は萩にかかっているのを知りながら萩のことは眼中にない様子。電車を降りたときに萩は男に声をかけられるが……そして萩の家庭事情。
「木曜日の迷子案内」
 陶子が入社したときになにかと世話を焼いてくれた長与和歌子。彼女は陶子が入社して三ヶ月で会社を辞めたものの陶子にとってはかけがえのない先輩。再び会い食事をして別れ社に戻ると真理から「助けて下さいよ」と言う電話。何かと思いきや子供に捕まって途方に暮れているという。
「金曜日の目撃証人」
 萩は信用調査の会社に勤めているのであるが今手がけているのは盗難事件。どうみても容疑者の女性が犯人に思えるのであるが様々な点から犯人とは思いづらい。女性は犯人は植木屋だと主張するもののその植木屋には確固たるアリバイがあってそのアリバイは崩れそうにない。本当はどっちが?
「土曜日の嫁菜寿司」
 急な出張を命じられた陶子。その陶子のために祖母が作ってくれた嫁菜寿司。陶子は弁当を片手に新幹線に乗り込む。そこで出会った女性のグループとなにかと仲良くなり一人の女性が振られた逸話を聞く。しかし陶子はもう一度チャレンジしてみなさいと励ます。果たしてその根拠は?
「日曜日の雨天決行」
 突然社長が接待ソフトボール大会をやると言い出した為に陶子はメンバー集めに奔走する。奔走したかいあってメンバーは揃い、試合が始まる。実力は拮抗し、結局雨のため途中でストップ。その時点で同点だったためにじゃんけんで勝敗を決することにした。翌日相手先に行った陶子はあることに気が付く。

 帯の「「ジハード」よりもけなげで、「ショムニ」よりもリアル!?」と言う文句は両方見てないんでわかりましぇーん(をひ)。まあ言いたいことは何となく伝わるんだけれども(だったら言うなよ)。何気ないOLの日常に潜む強烈な、とは言わないまでも何気ない謎、疑問点を解きほぐす。それぞれそれでも謎は謎として埋没しない分ミステリとしての読み解きもできないことはないがこの短編集はミステリとしてだけではなくそれ以外の部分を見たほうがいいような気がする。

 「木曜日の迷子案内」は北村薫のある作品の双生児的な存在。作者の北村薫への傾倒ぶりがここで伺える。アリバイ崩しの「金曜日の目撃証人」は鮎哲ばりのアリバイ崩し(大げさな(笑))が見られる。この「金曜日の目撃証人」のネタに関しては会社員の方なら容易にわかるのかもしれないのであるが。「土曜日の嫁菜寿司」は何となくであるが連城三紀彦っぽいきがする。まあ気のせいだろうけれど。

 曜日をかたどったタイトルの連作短編集。前作の『ガラスの麒麟』のはかなさは感じられないがほのぼのとした、しかしどこか寂しげな感じが味わえる。ところで「このミス」のアンケートでタイトルと通しての仕掛けがあるという事だが、まさか全部字数が同じ、なんて仕掛けじゃないだろうな。恐らく他に仕掛けがあるようなのであるがなんなんざんしょ。ご存じの方はご一報を

悪を呼ぶ少年 トマス・トライオン 角川文庫 820円

 この『悪を呼ぶ少年』は綾辻氏の『暗闇の囁き』(講談社文庫)へインスパイアを与えた作品として、割と有名だと思うのであるがこの度角川の復刊フェアのおかげで手に取ることができた。これは文庫に入っていたのを復刊したのではなく、単行本として刊行されていたものを改訳して文庫化したものである。そう言う意味永らく幻の作品とされていたものである。また、映画にもなっているらしいので映画の方を見た、と言う方もおられるかもしれない。幸か不幸か私自身は一九九八年九月二十九日現在この映画の方はまだ観ていないのであるが。近いうちにレンタルビデオショップを回ることにしよう。

 まず登場人物表を見て驚いた。ナイルズとホランド。そう、竹本健治氏の傑作『匣の中の失楽』(講談社ノベルス)の双子の兄弟の通称である。どこかで彼が好きな(または影響を受けた? ここら辺はうろ覚え)作品として本書を挙げていたことを思いだしなるほどと思った。イカれた双子の物語というのがこの『悪を呼ぶ少年』を一言で形容してるような気がする。

 さて、『殺人症候群』に続きまた解説である。この解説者は確信犯的にやってるからたちが悪い。本書を読んで衝撃を得たいと言う方は解説は本文読了まで読まないで下さい。というか、まあ忠告めいた文章があってその直後に思いっきりネタバレしているからねぇ。もちっと間を開けるとか、他の事柄を書くとか、してくれると良いんだけれども。もっとも解説を後回しにしたからと言って衝撃を得られるかどうかの保証はないけれども。つうわけで私はまたしても衝撃の原因が透けてしまった。教訓――解説は本文読了時に読む。それでも性懲りもなく解説があったらネタバレしてますと言う断り書きがなかったら真っ先に読むんだけれども(笑)

 牧歌的な雰囲気の町で、双子の一家を襲う様々な出来事。父親の死、従兄の死、隣人の死、母親の怪我、赤ん坊の失踪。それは一年も経たないうちに次々と起こる。それらの不幸を呼ぶのはタイトル通り“少年”なのか。どちらかというと双子の内“悪”なのはホランドの方でナイルズはおとなしい、ホランドの言いなりになっているナイルズ。だが本当にホランドは“悪”を呼び起こす少年なのか。原題の意味は何なのか。

 ホラーのジャンルには“恐るべき子供”といったジャンルがある。子供は果たして悪なのか善なのか。年端の行かぬ子供にはまだ善悪の観念は薄い。本書に出てくる双子はやはりまだ子供である。現在ホランドやナイルズと同じぐらいの年頃の子供の相手をしているものの子供って……と思うことがままある。本質的に子供というのは善悪の判断といった意味では大差ないように思う。何が言いたいのかというとここに描かれる双子はここだけに見られる決して特異なものではなく、ある意味普遍的な姿なのである――というのは誇張表現でやっぱり子供でも善悪の判断、やって良いこと悪いことの区別ぐらいはホランドやナイルズの年頃ならある程度解るだろう。しかし、この様な子供が全く居ないとは否定できないのも事実である。そう。ある意味子供は恐ろし生物なのだ。

 なんだか歯がゆいような、内容に触れてるような全く触れていないような文章になってしまったがしょうがない。この『悪を呼ぶ少年』というのはちょっとでも内容に触れると面白さを損なってしまうような、デリケートな物語なのであるから。どのような物か、是非とも手に取ってみてそれぞれ確認して欲しい。

秘密 東野圭吾 文藝春秋 1905円

 本当は買わないつもりだったが古本屋に行った際千百円という値段で売っていたために急遽購入して読むことにした。東野圭吾MLに入っているのになんて邪悪な(笑)読者なのであろう。この『秘密』は『名探偵の呪縛』以来の書き下ろしである(多分)。その間二年。そしてこれは断っておくがミステリーではないと私は思う。北村薫の『スキップ』(新潮社)(未読)の東野圭吾版だという評を聞くがむしろ私は真保裕一の『奇跡の人』(角川書店)だと感じた。『スキップ』を読んだらどう変わるかは解らないのであるが。

 内容を紹介する前にまず装丁。小豆色一色の表紙のど真ん中にシルバーグレイで 秘密 東野圭吾 と堂々と印刷されていてぱっと見渋くしかも先入観を一切持たせないそう言う仕上がりである。しかし、だがしかぁし、カバーをはぐと……あとは各自お確かめ下さいませ。と前置きがいい加減長くなったので本題に入ろう。

 妻の従兄が死去したため葬儀に出る為実家に戻るためにスキーバスを利用した直子と藻奈美。しかしそれがすべての悲劇とも喜劇ともつかない出来事の始まりであった。運転手の過労のための運転ミスによりバスは崖から転落。その転落事故は多数の犠牲者を出し二人も無事では済まなかった。直子は瀕死の重傷を負い藻奈美は意識不明に陥る。直子が息を引き取り藻奈美の目が覚めぬままこのまま二人とも失ってしまうのではと平介は途方に暮れるが藻奈美が目を覚ます。しかし、目を覚ましたのは藻奈美だが意識は直子であった……

 先に述べたようにこれはミステリーではないと思う。それでは何か? 言うなれば恋愛小説ではなかろうか。体は娘の藻奈美であるにもかかわらず心は妻の直子。このアンバランスな状況の中で担任の女性教師に心を動かされたり、直子(藻奈美)が高校に入学し上級生の男の子と仲良くするのを見て激しい嫉妬の炎を燃やし盗聴器を仕掛けたり。この平介の気持ちの揺れ具合、二人の仲は一体どう移っていくのかと言ったところは恋愛小説としか呼び得ない。そればかりではない。この奇妙な人間関係の元凶とも言えるバスの運転手の過労の原因はこの物語に大きく影を及ぼしている。

 読んでいる間幾度となく涙腺が緩んできた。泣ける。泣けるのである。特に終幕のあたりの風景は泣けてきた。これほどまでに泣ける場面があったであろうか。涙がポロリとはこのことである。外で読まなくて良かった(笑)これは最近では『光の帝国』(恩田陸/集英社)以来だな。

 系統としては『変身』『分身』の系譜であるがこれらの物とはちょっと一線を画する気がする。他の作家ならさけて通るような所をあえて書き込むようなところは『名探偵の掟』作者やなぁと結構見当はずれなところで感心してたりするのであるが。ミステリ的な「謎」を置かないで展開のみで読ませるその力量に改めて感服させられる。繰り返すがこれはミステリーじゃないと思う。だけれども「このミス」や文春のベストの選者の面々が好みそうな物なので結構上位にいくであろう。

 最後に。この本は図書館で借りて読むべき本ではない。知人から借りるか(古)本屋で買うか。それは……

屍鬼 小野不由美 新潮社 上巻2200円 下巻2500円

 一週間かけてようやっと読了。『人狼城の恐怖』より換算枚数は少なく『塗仏の宴』より換算枚数は多い(はず)だが、結果的にはこれらより分量的に多い気がした。小野不由美の最新作『屍鬼』は京極夏彦激賞である。上下巻で5000円近くするために引いてる方もおられると思うが決してコストパフォーマンスの見地からすれば悪くはない。軽く内容を紹介しよう。

 外部から遮断された村――外場。昔からの地縁的繋がりで村は平穏に過ごしていた。たまにやってくる転居者もごく少数の例外を除いて村の住人の近縁者。そのごく少数の例外の結城夫妻も祭に参加することで村の一員としての一体感を味わっていた。その祭の最中、どこからとなく運送会社の車がやってきたが引き返してしまう。この日現れた車が外場を襲い、壊滅させた災厄の始まりであった。侵入した何者かは村を侵食し、次々と屠っていく。最後に外場は火に包まれて崩れ行く。

 個人的にこの人の文章のリズムが合わないのか一気読み、とはいかなかったものの途中で何度も中断したにも関わらず読み始めると物語にすっと入っていける所などは感服。だからこの人の文章が合う人ならば一気読みでだーっと読めるんじゃないかなぁ。

 帯では京極夏彦氏激賞で怖いと言うような書き方をしているが私は恐怖よりもむしろ哀しみを感じた。ただ、倦怠感が続き、いきなり死に至ると言う正体不明の病気の様は割と恐怖かも。

どのような哀しみか以下に書きますが先入観を持ちたくない人はここから引き返して下さい。
 ところで、この『屍鬼』というタイトルを聞いてどのような内容を思い浮かべるであろうか。私はストレートにゾンビもの(しかも舞台は外国)と思った。この予想は全くの見当違いというわけではなかったものの(後者はともかくね)死者が甦り人を次々と殺していく「バタリアン」みたいなものではない。ここでいう“屍鬼”とは吸血鬼なのである。人を襲い、血を吸われた人間が吸血鬼になる。古典的な、あまりに古典的な手法である。しかし、この古典的とも言える手法が上手く効果を上げている。血を吸われた人が全員“屍鬼”になるかというとそうではない。限られた人間しか“屍鬼”にはならない。“屍鬼”は人の血を吸わないと生きていけない。そもそも“屍鬼”というのは一度死んだ人間。生きるためには“食事”をしなければいけないのであるが“食事”はしたくない。“食事”をすることイコール人を殺すことと解っているためになかなか踏み切れない。踏み切ったにしても続けていけない。その心理の揺れ動きに哀しみを感じた。

 上記の哀しみを描くために“屍鬼”側からの視点で描いたところは結構新鮮であった。私の貧相な知識を総動員しても人間の側から描いたホラーは多々あるが異形のものの視点から描いたものは初めてで「ああ、こういう手法もあるんだねぇ」と感心してしまう。

 恐怖か哀しみか。どちらを感じたかは各自お確かめ下さい。決して損はないはずです。

(10月8日追記)
 村の消失ということでアプローチは全く違うが『塗仏の宴』を思い出した。皆さん同じ鉱脈((C)二階堂黎人)を掘っていらっしゃるんですねぇ。

殉教カテリナ車輪 飛鳥部勝則 東京創元社 1800円

 第九回鮎川哲也賞受賞作。タイトルや装填だけ見ると渋く、純文学や国文学の資料的本を思い起こさせる。著者近影を見ると寿司屋のカウンターの向こうで寿司でも握ってそうな(笑)感じの人間である。へい一丁あがりぃ! とかいって。そしてこの応募原稿が手書きであったと言う点もそれを裏付ける(わけない)。まっとうな本格ミステリ『殉教カテリナ車輪』タイトルも秀逸。内容はと言うと三人の視点から描かれる。事務員井村正吾、大学教授矢部直樹、早世の画家東条寺桂この三人の視点。プロローグでは何者かが人を殺したという独白である。

 一九九七年春。井村はふとしたことから矢部と親しくなり、矢部が清書したという早世の画家東条寺桂の手記を手に入れる。その手記は東条寺の義理の父親豪徳二と佐野美香が殺害された、奇妙な密室殺人事件を綴っていた。その密室殺人とは二つの密室があり、被害者は同時に殺されしかも凶器は一つ。その記録は東条寺が美香と出会ったその時点のことから綴られていた。その手記を見つけるまでに矢部は東条寺が残した「S嬢」、「殉教」などの絵を見ていた。そもそも矢部がこの手記を発見した理由というのが「S嬢」がどことなく彼の妻に似ていた、そのような他愛のないことから東条寺桂に興味を持ったからであった……。

 真っ当な、本当に真っ当な本格ミステリ。本書の印象はまずそれである。なんか著者近影からは想像もつかない。しかも作中の絵も作者の手によるものだからなおさらである。密室のトリックはふぅんなるほどねぇと言う感じであったが(そもそも密室トリックで度肝を抜くのは難しい)それを補強する意味でのアイデアには感服させられた

 ただ難を言えば文章がちょっとばかし冷め過ぎな点かなぁ。無論こういう内容にはこういった冷めた視点の文章が合うのは解ってはいるのであるが(この装填で熱気むんむんの文章だったらいやすぎる(笑))もう少しどうにかならなかったんかいな。今後もこう言った図像解釈学を用いたミステリを書くかどうか。何となく今後が気にならないではない人ではある。

 今年の選考は紛糾しなかったようで残念と言えば残念(笑)この様子じゃ他の候補作は出版されないな。多分。

ホット・ロック ドナルド・E・ウエストレイク 角川文庫 780円

 角川から犯罪のような(笑)ラインナップで復刊されたものの中の一冊。『逃げ出した秘宝』などでお馴染みのドートマンダーものの第一作である。いうなれば泥棒スラップスティックコメディというものか。一個の宝石を巡って様々な喜劇が繰り広げられるのは『逃げ出した秘宝』と変わらない。とりあえず内容の紹介を。

 刑期を終えて出所してきた天才“仕事師”ドートマンダー。その“仕事師”に“仕事”の依頼が舞い込んだ。報酬は一人頭三万ドル。週単位で生活費も出る。その“仕事”の内容はドートマンダーの十八番盗み。アフリカのタラブウォの大使アイコー少佐が五十万ドルのグリーンエメラルドを隣国アキンジから盗み出して欲しいということだ。しかし、宝石の護送は厳重でなかなか隙がない。その隙をついてドートマンダー以下五人は盗み出すのに成功したかのように見えたが……。

 様々な盗みの趣向を凝らしているところが面白い。ヘリコプターを使ったり機関車を使ったり。一個無茶苦茶やん(笑)と思うのがあったけれどそれはご愛敬といったところか。一個の宝石の行方もまた笑える。まさに金は天下の回りもの(ちょっと違うか(笑))。宝石が誰の手に移るか、そしてその宝石をどういう奇抜な方法で奪還するかそれがこの物語のミソ。その宝石が最終的にどこに行くかは読者の期待、予想を超える。「そこにいくか(笑)」と笑ってしまった。途中ドートマンダーが堅気になってセールスマンの仕事をしてるのがまた楽しい。

 そして合い言葉は「アフガニスタン・バナナ・スタンド」。『逃げ出した秘宝』同様海外物はちょっと……と言う方にお薦めできる一冊

異形コレクション(2)侵略! 井上雅彦監修 廣済堂文庫 762円

 このタイトルからしてホラーというよりもSFと言う感じがして後回しにしていたのであるが、そのことを友人に話したら「そんなことはない」といわれ、手に取ってみた。それにしてもこの異形コレクション、累計五十万部は売れてるそうな。あな凄し。と言うわけで恒例となってる(?)気に入った作品紹介。

「地獄の始まり」(かんべむさし)
 世界中で子供が「なにかがおおかしい」と訴えるという事態が多発する。本当に何がおかしいのか?
「雨の町」(菊池秀行)
 日本で一番雨が降る町。そこは晴れる日が年に一週間ぐらいしかない。そこで神隠しにあった子は戻ってきても家に入れてはいけない……。
「赤い花を飼う人」(梶尾真治)
 昔から口コミで伝わる妙な噂というのは多々ある。その中の一つ、普通でない日とは例外なく花を“飼って”いるという。男の上司もまた花を“飼って”いた。
「彼らの匂い」(大場惑)
 異常嗅覚という特殊な技能を生かす職に就いた男であったがその仕事の目的は多数の人の中から特定の臭いを出す人を探すことであった。
「暴力団の夢見る頃」(山下定)
 岩尾の兄貴が組に戻ってきた。しかし兄貴は死んだはずである。生きているはずがない……。どうしてここにいるのか? しかも覚醒剤を食べるという奇行。おれは兄貴の命を取ってくるよう若頭に命令された。
「さりげなく大がかりな」(斉藤肇)
 奇妙な調査をしに人がやってきた。国勢調査にしてはおかしいし……。話を聞くと、これは世界中で見られたもののようである。もしかして異星人が? 何のために来たのか。

 以上六編であるが、ベストは神隠しとこのアンソロジーのキーワード“侵略”を上手く融合させた「雨の町」(菊池秀行)かな。なんかほのぼのしている「さりげなく大がかりな」(斉藤肇)なんかも結構いいかも。都市伝説の「赤い花を飼う人」(梶尾真治)も「異形」と言う意味ではいいかも。この「異形」というキーワードと“侵略”のフレーズが上手くマッチしている「命の武器」(草上仁)もこのアンソロジーにふさわしい。

 今回はタイトルと扉絵がマッチしているのは見あたらなかったが、コピーして繋げると絵巻物ができると言う趣向があるためで今回は見送り。今回はテーマ的にSF寄りであるが、「花菖蒲」(横田順彌)のように別段中に“侵略”や「異形」を意識していないにも関わらず結果的にこれらを内包しているものもあり興味深い。やっぱりこの異形コレクションは偉大だ。


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