くらしと協同の研究所設立の趣意書

1993年6月26日

 21世紀を目前とする1990年代の今日、世界の政治・経済の構造は大きく変化し、新たな局面を迎えています。日本においては社会構造の大きな変化が進む一方、従来からの政治・経済的枠組みは基本的に維持され、その結果、「経済大国」「消費大国」といわれながらも、実感のもてない「豊かさ」やゆとりのないくらしが問題となり、国民生活の中にある歪みが大きくなっています。

 共通するくらしと協同の課題

 農業の分野では、米やその他の農産物の輸入自由化をはじめ、これまでの農業生産の体勢は大きな変革に直面しています。また流通分野では「改正」大店法の施行にともない、地域の経済・社会の構造変化が促進され、中小企業をとりまく状況、地域のくらしの環境はきびしいものとなっています。

 こうした経験の示すところは、くらしをとりまく困難や課題の多くが、特定の個人や階層に固有なものではなく、広く国民諸階層に共通していることです。国民各層が、くらしの改善・向上をすすめるための協同活動がいまほどもとめられているときはないでしょう。 協同活動の再評価はくらしにかかわるより広範な領域ですすみはじめています。一時縮小した社会的格差の拡大や地球規模での環境保全問題等は、協同活動をくらしの「防戦」におしとどめることなく、積極的なくらしのあり方の追求や21世紀にふさわしい生活文化の創造をめざす、より広い視野からの協同活動をもとめているといえましょう。

 地域における協同活動をさらに前進させるためには、より広範な人々の参加と各自の能力を高めることが不可欠であります。とりわけ、その担い手の育成と「協同」の原理を深めることが決定的に重要なことでありましょう。 

 協同を基礎とする研究機関を 

このような状況のなかで、21世紀につながる大きな転換点をみきわめ、その変化の過程を地域住民の立場から調査・研究し、その成果を住民のくらしに役立てることの意味はきわめて大きく、地域住民のくらしを望ましい方向に発展させるとともに、学術・文化の向上にも貢献しうる研究機関の設立や研究者・専門家の系統的育成が強くもとめられてきました。

 このため、1992年11月以来、西日本の諸生協、各種の協同組合組織や団体とそのメンバー、そして大学やその他の研究者・専門家がそれぞれの立場からありうべき研究所像の検討を重ねてきました。そして、こうした討論と各地の研究活動を踏まえ、1993年6月、多くの協同組合、諸団体、研究者、協同組合の組合員、役職員そのほかの方々の積極的な参加によって「くらしと協同の研究所」を発足させることができました。

 日本の協同組織における研究機関としては、すでに協同組合経営研究所、協同組合総合研究所、コープこうべの生活研究所等が活動し、とくに生協総合研究所は、生協の連合会の全国的な研究所としてすでに大きな役割を果たしておられます。あるいはまた、各地の協同組合でもさまざまな調査・研究活動が積極的におこなわれており、多くの成果をあげておられます。このようななかで、当「くらしと協同の研究所」は自らの目標として、先達の諸経験に学びつつ、第一に全国的ネットワークとりわけ西日本における研究ネットワークの一環としての役割を分担し、各地の協同的研究の発展に貢献することをめざしたいと思います。

 第二に、くらしと協同にかかわる分野における専門的研究の一層の深化をはかるとともに、これらのテーマの研究に意欲をもつ人びとが参加でき、個々人の成長を保障しうる開かれた研究所としての機能を拡充していきたいと考えています。

 「くらしと協同の研究所」は以上の趣旨にのっとって新しいタイプの実践的な真理探究の場をめざす所存でありますので、今後とも多様な形のご参加を期待してやみません。