ジャンクカメラ修理工房

1999/01/04 OPEN
2000/01/03 UPDATE

最近の電子式カメラになるとお手上げですが、純機械式カメラであれば
部品さえ欠損していなければ素人でも修理することが可能です。
このページでは、ぼくが手がけたカメラ修理のノウハウを順次紹介していく予定です。

最新更新ニュース

2000/01/03   コニカオートレックスP修理記録  
2000/01/03   キャノンデミ修理記録  
1999/01/31     キヤノンデミS
修理記録


このページでは、たまたま手に入ったジャンク品(※)minoltaのSR-1を例に挙げて
カメラ修理の手順をご紹介することにします。
このminolta SR-1は露出計が内蔵されていないこともあり、仕組みが単純で
比較的作業のしやすい機種です。

故障品、中古カメラ屋で「研究用」「教材用」と称して売られているガラクタカメラ。
故障の程度によりさまざまであるが、そのままでは使用できないカメラ。
中にはちょっとしたメンテナンスで直るものもありマニアにとっては宝くじ的な存在。
修理する人件費等、経費の観点から見捨てられているが、
エコロジカルな視点からはユユしき問題である。

●主な症状 1.シャッターがおりない
2.レンズが180度回転してボディに付いていて、なおかつ取り外せない。
  (どうして、こんな付け方が出来たのだろう?)
 
●処置 1.シャッターメカニズムのジャム(からまっている状態)からの復旧
2.レンズの無理な取り付けに関しては「知恵の輪」的に外す。
3.レンズ取り付け部ロックの調整
4.シャッター羽根部分のネバリ(油汚れ)の清掃
5.スクリーン・プリズムの清掃
6.ボディ金属部分の洗浄


修理の実演

以下の実例はminolta SR-1での修理例です。当然、他メーカ・他機種のカメラとは構造が異なりますので
その場合は、ここでの修理法が適用できない場合があることをご理解ください。

1. 物事には何を始めるにせよ道具が必要です。
カメラ修理には次のものを用意しましょう。

精密ドライバ
電気屋で景品にもらうもので十分ですが、+−共にいろいろな大きさを用意しましょう。
ラジオペンチ
コンパクトなもの、中型と数種類あれば便利です。
ハンダごて
これもコンパクトなものが便利です。すぐ使える状態になるので
15Wのものをぼくは使っています。ストロボ接点のハンダの着脱に必要です。

トレイ
部品を置いたり、またこの上で作業すると小さなネジの紛失防止になります。
おボンでも何でも良いと思います。

メモ
取り外す前の部品の位置や状態を記録します。
カメラ修理の成功のカギを握る作業ですので面倒がらずにマメにメモする姿勢は大切です。

その他、あれば便利なもの…

テスタ
露出メータ内蔵機種の場合は通電チェックができます。
カニ目回し
カメラで多用される2つの穴があいた部品を外す道具です。ぼくは持っていません。
突起が2つあるため通称「カニ目」と言います。持っていれば、きっと便利なものでしょう。
これがないためどれだけ苦労していることか…。このページでは代用品を紹介します。
けれども、どんな穴(大きさ・位置)にも対応できる万能品はないと思うので
必然的に自作や代用品を探すことになります。
左は代用品でラジオペンチに釘を輪ゴムで固定させたものです。

デジカメ
メモの代用になります。使えるツールかな、と思っていましたが
意外と画像を参考にして組み立てることは過去ありませんでした。
メモを参照する機会の方が多いので、ある種の保険みたいなものですね。
接写に強いタイプが便利です。ぼくはRICOHのDC-2を使っています。


2. 精密ドライバのカスタマイズ

精密ドライバと言えども、そのままではカメラには満足に使えません。
ネジの形状に合うよう砥石でマイナスドライバをさらにといで
先を細く薄くします。かなり危ない器具に変化しますので、
作業中の取り扱いには注意してください。
失敗すると簡単に手に刺さります(経験談)。
次に適当な釘を探して「多角錐(すい)」状態の先を同じく砥石でといで
「円錐」にします。先が鋭すぎるので今度はドライバと逆に
先を若干滑らかにします。これは「カニ目回し」の代用になります。
砥石でとぐ時間はそれほどかかりません(1本数分程度)。


3. シャッター機能の修復

ボディ下のカバーを開けシャッターのチャージから
リリースまでの動作を確認します。

シャッターメカニズムに関しては下手に手出しできないところですので、
最小限度の点検しかできません。コンピュータプログラム同様、
仕様書や設計図がないと動作は正確につかめませんから。
ぼくの場合、今まで見てきたのはギヤや連接レバーが何かの拍子で
引っかかっている場合が大半でした。
ギヤの並び等を見てわかる範囲で連動部分の動作をチェックしていると
知らぬ間に不思議と動き出しています。ギヤの取り外しなどは決してしません。
名付けて秘儀「魔法の手」です。

今回のSR-1の場合は、ボディ右側にあるタイマとシャッターの連動、
それとボディ下の連接レバーの連動が固まった状態でした。

画像は別機種(KOWA SE)の記録ですがボディ両サイドに貼り付けてある
合成皮革カバーを焦らずゆっくり剥がし、その後比較的大き目のネジを外し
ボディからレンズ取り付けユニットを離す作業は重要です。


4. スクリーンとプリズムの清掃のためトップカバーを外す

トップカバーを外すためには、巻き戻しノブ・シャッタースピードダイヤル・
巻き取りレバーを取り外さなければなりません。巻き戻しノブは裏蓋を開け
フィルム室の巻き戻し棒の二又部分をドライバ等で固定して
ノブを回転させると取り外せます。シャッターダイヤルは固定ネジを外します。

ネジ類による部品は原則「取り外しは左巻き」のようです。


5. カニ目穴がない部品は滑り止めになるものを利用し外します。

このケースではフィルム巻き取りレバーのストッパを外すため
自転車パンク修理用のゴムシートを使いました。
適度な厚みのあるゴムなので柔軟性と耐久性を兼ね備えています。

ぼくはかなりの握力(※)の持ち主なので指で挟むだけで取り外せますが
通常は部品に傷がつかないようゴムシートを被せ、
ペンチで挟んで回します。不安定な作業になりますので、
力を入れ過ぎ、弾みで器具を外しボディを傷つけないよう注意してください。

※カメラ修理とは関係ありませんが過去の最高記録は右82.5kgです。


6. スクリーンとプリズムに付いたゴミと汚れを落とします。

埃がかなり付着してファインダを覗いた時に気になったため清掃しました。
プリズムはデリケートな部品ですので慎重にミラーコーティングを
剥がさないよう作業する必要があります。
ブロアで埃を飛ばした後、レンズクリーナで軽く拭く程度にしました。


7. レンズ取り外し用「カニ目回し」代用の例です。

実に原始的で公開するのが恥ずかしいぐらいですが、
見事にレンズ止めを楽に外すことが出来ました。
材料は割り箸・小型簡易万力・マイナスドライバ2本です。
割り箸は折れますので、もう少しまともな素材を探した方が無難です。
代用品の悲しいところは時折、部品の引っかけから外れて
部品を傷付けてしまうところです。十分に注意して作業を進めましょう。


8. ネバリ(油汚れ)が付いて開閉しないシャッター羽根を清掃します。

わざわざ分解しなくても、揮発性の石油類を少量垂らし
シャッター羽根を開閉させ綿棒・ティッシュで吸い取り、を
何度となく繰り返す方法もあるのですが、ぼくはシャッターの構造上
比較的分解しやすいものに対しては、羽根まで分解して
一枚一枚汚れを拭き取るのが好きです。
後の組み直しが大変ですが、これは一番ヤリガイのある作業と思っています。

レンズを分解してしまうと後の調整が実に大変ですが
一眼レフの場合は見ながら調整できるので比較的楽観視してます。
レンジファインダのレンズを分解したこともありますが
ハーフカメラでしたので分解する前の位置をメモする程度で、
それほど神経質に考えませんでした。

いずれにせよレンズの構造を良く調べ再調整が必要ないような
分解の仕方ができるか考察すれば後の作業は遥かに楽になります。


9. 細かい部品の作業では必ず、 部品の位置や順番等を記録するメモ
とってください。

分解した部品のリストアが成功裏に終わるかどうかは、
メモをとるかどうかです。億劫がらずに何でもメモしましょう。
ぼくがカメラ修理を始めた頃は、ネジの一つ一つをメモにとったカメラ図に
テープで貼り付けて完全な再配置を心がけました。
慣れてくると取り外した部品の側に置いておくだけでわかるようになりますが、
時折、組み立てが終わった時に小さなワッシャが余って
後味悪くなることもあります。
綺麗にとれたメモはそれだけでも結構「芸術」になっています。

ネジを扱う作業は入念にしてください。
カメラにはゴマ粒より小さなネジが多用されていますので
足元に落とす等、一度視界から消えてしまうと再度出てくる可能性は
なくなってきます。またネジ以上にスプリングには注意してください。
とにかく飛びますのでテープ類で保護した上で作業するのが賢明です。
小さな細いスプリングでも予想以上にテンションがかかっています。


10. レンズがボディにロックされないので原因を調べました。

レンズをボディに付けてもすぐ回転してとれてしまうので
ロック部分を見てみると部品にわずかな湾曲が確認できました。
ペンチで曲げすぎないよう慎重に矯正しました。


11. 濡らしても動作に影響のない外装部品を洗浄します。

可動の部品が付いていないことを確認して、外装の汚れを落とします。
「マジックリン」等の洗剤を使用しても良いのですが、
印象として泡切れが良くない気がするので
ぼくは「ガラスクリーナ」を好んで使用しています。
洗浄後は水分を良く切り、ヒーターにあて十分に乾燥させてください。


修理作業終了

minolta SR−1

1960年前後のカメラで、無骨なデザインは大量生産時代のはしりを感じさせる。
そのデザインの印象か、重たさが助長されるカメラである。実際かなり重たい。
シャッター音が「パリンッ」という感じで、いつもミラーが心配になるのであるが
現役の頃からこういう音がしていたかは不明である。
ちょっと逆説的な表現になるのだが、このカメラを修理して
露出計が内蔵されていない手軽さ、というのを実感した。
壊れても自分で直せるという意味での手軽さである。
セルフタイマでは多少戻りに衰えを感じるが、十分まだまだ使えそうな機種である。

オートロッコールPF1.8/55mm
最短撮影距離0.5m(1/500〜1、B)
フォーカルプレーンシャッター
535g(ボディ)


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