土佐くろしお鉄道阿佐線(ごめん・なはり線、後免・奈半利)


最新乗車 2002年夏


土佐くろしお鉄道阿佐線は、もともと牟岐線や阿佐海岸鉄道とつながって室戸岬を回り高知徳島を結ぶ鉄道になるはずであった。しかし国鉄の財政難によりあえなく工事は凍結され、東側に1973年に牟岐線牟岐海部間が、1992年に阿佐海岸鉄道海部甲浦間が、そして今回西側に土佐くろしお鉄道阿佐線が開通したにとどまった。また、この阿佐線が走っている区間には、かつて後免安芸間に土佐電気鉄道安芸線(以下安芸線)が走っていたものの、一部区間で阿佐線に路盤を流用するために1974年4月に廃止になっている。同じような境遇の江若鉄道が1969年11月に廃止されて、1974年7月に湖西線に生まれ変わったのと較べると、阿佐線は開業するまで6倍の年月(湖西線:4年8ヶ月、阿佐線:28年3ヶ月)を要していることになる。そんなこともあって、この路線は日本鉄道建設公団が建設する「最後のローカル新線(公団AB線)」として開業することになった。真新しいコンクリートと苔むしたコンクリートが並存する、時の流れを否応にも感じさせてくれる路線である。

土讃線との分岐駅後免には、阿佐線ホームに「ごめんえきお君」の看板人形がでーんと構えている。この路線は、沿線出身の漫画家やなせたかしが各駅ごとのキャラクターをデザインし、各駅の駅名板などに描かれているほか、車輌のストライプにも描かれているのが特徴である。さて、後免駅は国鉄型2面3線から、阿佐線専用の0番線を加えて2面4線化され、橋上駅舎に改築されている。以前、私が訪れた際は「南国市」であることを強調したいからか1番線ホーム脇にヤシの木が林立していたのだが、その場所に0番線を敷設したようだ。後免を出ると列車はすぐに高架線に上り、家の軒スレスレを右に急カーブする。今度は土佐電鉄後免町を右に見下ろしながら左に急カーブすると後免町である。この辺りは周囲が建て込んでいる事もあってかつての安芸線の廃線跡にそのまま高架橋を構築しているようだ。後免町を出ると列車は水田の中を快調に直進する。立田を過ぎ、物部川を渡ると駅前に阿佐線と同時に開業したショッピングセンターが広がるのいちである。自動車利用のみを考慮して造られる郊外型ショッピングセンターの中で、鉄道利 用の可能性にも配慮された例は珍しいかと思われる。

列車は右カーブしながら地平に下り、国道55号線をくぐるとすぐに高架線に駆け上がる。ここは最初の計画では高架線で国道を跨ぐ予定で、ほんの一部高架橋も建設されていたものの、これを撤去してかつての安芸線が国道をくぐっていた場所をそのまま流用したという、なかなか曰くつきの区間である。副産物として原則設置しないはずの踏切ができてしまったが、コスト削減のためには背に腹は変えられないというやつであろう。のいちよしかわあかおかの辺りでは、安芸線の路盤をそのまま流用したためか、細かいカーブが随所に見られる。あかおかからは右に太平洋が広がる。安芸線の路盤を流用した(はずの)サイクリングロードがさらに海側に並行しているので、この辺りは路盤の流用がなされていないか、もしくは路盤を流用するためにサイクリングロードを移設したかどちらかであろう。なお、海と反対側を見下ろすと国道55号線とぴたり並行して走っているのがよく分かる。香我美を過ぎて駅前に海水浴場「ヤ・シィパーク」や道の駅やすが広がる夜須に着く。

夜須を出ると国道55号線を跨ぎ、安芸線の廃線跡とも別れて一直線にトンネルに入る。手結崎をショートカットするためである。かつての安芸線は国道と並行して岬を回り込んでいた。トンネルを出て国道を跨ぎ、再び太平洋に沿って西分和食と松林の中を走る。安芸線の廃線跡はすぐ海側を通っている。赤野で安芸線の廃線跡は山側に移り、国道とともに徐々に高度を稼いで阿佐線がトンネルに入るところで上を跨いでいく(高架線の続く阿佐線で撮影しようとすれば、こことあと数箇所くらいしかない)。ここでも阿佐線は岬をトンネルでショートカットしている。トンネルを出ると再び海沿いをしばらく走り、国道と安芸線の廃線跡を跨いで穴内を過ぎる。すでに夜須の辺りから安芸線の路盤を流用した箇所はほとんどなくなっている。再びトンネルをくぐると球場前。プロ野球チームのキャンプ地として有名な安芸市営球場の最寄り駅である。海側には、安芸線安芸駅の跡を流用したバスターミナルも見える。市街地の山側に沿って走るとこの路線の中心駅、安芸である。

安芸には車庫も併設されており、2002年7月1日に沿線で最大の開業式典がこの駅で執り行われた。安芸から先には土佐電気鉄道は走っていなかったので、この先は完全な新線である。安芸を出た列車は相変わらず安芸市街地の山側に沿って走り、やがて国道55号線を跨いで海側に出て伊尾木を過ぎる。この辺りは防波堤のすぐ内側を走っているのだが、高架線と地平線が断続し、先頭で見ているとまるでジェットコースターのようである。国道を跨ぎ、道の駅大山の脇で大山岬をショートカットするトンネルに入る。トンネルを出ると下山で、次の唐浜との間は再び海沿いを走る。唐浜からトンネルをくぐって大きく海から離れ、安田を出てすぐに安田川を渡る。再びトンネルをくぐって田野を過ぎ、再び太平洋を眺めながら国道と奈半利川を渡ると終点の奈半利である。線路1本にホーム1本の素っ気ない終着駅である。この先、室戸を通って甲浦に繋がる日は来るのだろうか。


四国編目次へ戻る
ホームへ戻る