田沢湖線(秋田新幹線、盛岡・大曲)


最新乗車 1997年夏


田沢湖線は、盛岡秋田を直結する路線として1965年に全通した比較的若い路線である。しかし、若い割には1982年の東北新幹線盛岡開業に合わせての全線電化、さらに新在直通のための標準軌への改軌と幾度も大きな改良を受けている。元は盛岡大曲からそれぞれひょろりと伸びていた盲腸線の軽便だった(とはいえ、軽便線の頃から盛岡、大曲を直結する意思はあった)だけに、かなりの出世である。

秋田新幹線「こまち」は盛岡駅新幹線ホームから、普通列車は東北本線地上ホームから発着し、構内の外れで合流する。秋田新幹線開通前は特急「たざわ」には485系電車、普通列車にはキハ40などの気動車が用いられていたが、現在は「こまち」がE3系新幹線電車、数少ない普通列車が専用の701系5000番代電車にて運転されている。東北自動車道をくぐり、大釜を過ぎる頃には、盛岡市の郊外から風景は田園地帯へと変化している。小岩井は言わずと知れた「小岩井農場」の最寄り駅であるが、言うほど近くにあるわけでもなく、さらに「こまち」が停まらないところをみると列車を使って訪れる観光客は少ないようだ。「こまち」の停まる次の雫石か、盛岡市街から車かバスで訪れるのが普通なのだろう。そういえば、まだ小岩井農場の中にはSLホテルが存続しているのだろうか。この辺り、進行方向右側に大きく岩手山がそびえている。

雫石といえば、失礼ながら1971年の航空事故がすぐに思い浮かんでしまう。とはいえ、雫石駅は小岩井農場や温泉郷への玄関口として1日数往復の「こまち」が停車し、観光客の乗り降りが多い。春木場を過ぎる辺りで岩手山は見えなくなり、両側に山が迫ってくる。区間列車が折り返す赤渕を過ぎるといよいよ谷が狭まり、併走していた国道46号とは分かれて別な谷に入って行く。人口希薄な地域を走っていくため、次の田沢湖までは18kmもあるが、田沢湖線は単線なので行き違いや追い越しのために途中2ヶ所に信号場が設けられている。「こまち」に乗っていると、これでも特急かと思うような速度でのんびりと谷を登っていく。ほとんど沢登りのような感覚である。この区間、私は盛夏に乗車したので緑が眩しかったが、秋に乗れば紅葉が美しいかもしれない。

長大な仙岩トンネルをくぐると岩手県から秋田県に入り、やがて別な峠でこの県境を越えてきた国道46号線と再び併走するようになる。生保内川の谷を下り、少し周囲が開けると田沢湖駅である。駅名や線名の由来となった田沢湖は北側にあり、駅からの直線距離は近いのだが、カルデラ湖である関係上そこに至る道は少々迂回している。また湖面の方が線路より高いため、車窓から田沢湖は望むことができない。国道46号と併走しながら、どんどん下っていく。線形が厳しくカーブが多いため、なかなか列車のスピードが上がらず、「こまち」ですら車に抜かされていく情けないシーンが見られる。角館盆地に入る神代を過ぎると周囲が開け、田園地帯の中を一直線に走るようになり、当然ながら列車のスピードも上がる。生田を過ぎると国道46号線と離れ、秋田内陸縦貫鉄道と合流して角館へ到着する。武家屋敷の町並みが観光客を集め、田沢湖線では田沢湖に並ぶ観光の拠点となっている。角館からはほぼ一直線に広大な田園地帯を突っ切り、右に奥羽本線を見て左に急カーブすると大曲である。「こまち 」はここでスイッチバックして奥羽本線に入り、秋田を目指す。


東北地区JR線目次へ戻る
ホームへ戻る