2007年5月−8月

5月1日(火)〜4日(金)
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●「SAW」★★★★
 方々で評判のサスペンス。今更ながら観ました。
 冒頭、どこかの地下室で対峙する2人。何者かが2人を拉致し、地下室に閉じこめたのだ。2人とも足首には枷がはめられ、動くこともままならない。そして、片方が死なないと片方の家族も死ぬという条件で2人が取る行動とは。
 スプラッタな描写もあり、その辺が苦手な人はきついかも。個人的にスプラッタものは嫌いではないのだけれど、それはそう言うものだという舞台装置が整っていればでそれが無いとチトきついかも。とは言え、全て必然性のあるもので無駄なものではない。それにしても、この作品、映像ならではのものがあり非常に素晴らしい。仕組んだ犯人は誰なのか、と言うフーダニット興味があるのだけれども、その正体はあまりにも大胆に伏線が引かれているにもかかわらず見破るのは難しい。最後の最後まで目が離せなく、映像のものとしてはこれ以上にないものも。
 本編そのものは素晴らしかったものの、続編が面白いかは謎。まあ、機会があれば観るとは思うが期待せずに観ることにします。
●『ウルチモ・トルッコ』【bk1】『絞首人の一ダース』【bk1】『レインツリーの国』【bk1】読了。

5月5日(土)〜11日(金)
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●「SAW2」★★★☆
 と言うわけで割と間をおかずにパート2を。
 前作で捕まることがなかった連続殺人犯「ジグソー」のアジトを突き止めた警察がSWATを伴って突入する辺りから物語が動き出す。冒頭、「ジグソー」という連続殺人犯がどんな人物かを示す「殺害」シーンが挟まれている。刑事の息子が人質にとられ、その映像が目の前に。「ジグソー」は刑事に一つのゲームを持ちかけるのであるが……。
 フェアプレイ、と言う意味では前作同様だ。「ジグソー」の言葉に全く嘘がない、と言うのは驚きで脚本の巧さが目立つ。更に、映像で栄える大がかりな仕掛けが施されており(叙述トリックではない)驚かされる。まあ、前作と違い、これは小説でも可能であろうが。前作の時もそうだけれど、「真実」が明らかになる際の伏線の連打というべきシーンは「ユージュアル・サスペクツ」を彷彿させるんだけれども意識したのか。いずれにせよ、これだけ本格スピリット溢れる作品がアメリカ映画というのも興味深い。やっぱ、アメリカって映画大国なのね(まあ、今更だけれども)。いや、なんとなくミステリ映画の傑作秀作佳作は海外ならばイギリス、と言う先入観があったもんで。考えてみると、ミステリ映画の傑作として指をおるべき「羊たちの沈黙」はアメリカ映画だ。尤も、これは原作ありきなのだけれども。
 既に第3弾がレンタルリリースされているので、これまた機会を見てみる予定。期待は裏切られない、と思う。
●『さまよえる脳髄』【bk1】『どんでん返し』【bk1】『純棘《Thron》』【bk1】『証拠は語る』【bk1】『タイムカプセル』【bk1】読了。

5月12日(土)〜18日(金)
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●『テアトル東向島アカデミー賞』(福井晴敏/集英社文庫)【bk1】★★★☆
「小説すばる」(集英社)に連載された、福井晴敏の映画エッセイ。映画について熱く語る語る。その熱さは尋常ではなく、イデオロギーの域に達するのではないのか、というくらい。と言うのが言い過ぎにしても、本書で発露されている映画愛は尋常ではない。ホント、この人映画好きなんだなぁ、と言うのが良くわかる。
 福井晴敏が関わった映画3本が2005年に立て続けに公開されたが、そのプロモーションを兼ねた箇所は一連の映画作品の裏側がかいま見られて面白い。やはり、この人は映画を解ってるねぇと思わされる。まあ、かくいう私がどこまで映画を解ってるかは謎だけれどもw それにしても開き直り具合は結構笑えるのだけれども。
 笑えると言えば、おまけの書き下ろし漫画も爆笑もの多々。文庫オリジナルと言う形態故に、一度品切れになったら入手は困難を極めると思われるので本書にチラリとでも興味が湧いたらブックオフ落ち待ち、なんて悠長なことを言わずに入手して積んでおくことをオススメしておきます。
●NHKのご乱心好企画、「そのとき歴史が動いた」の乱歩を中心としたミステリ界の巻。見ていて思ったのは、国産ミステリの歴史が動いたのは探偵作家クラブ結成ではなくて乱歩の渡米頓挫の瞬間だったのではないのか、と言うことだったり(どうやら乱歩はアメリカでミステリ作家デビューをしようとしていたらしい)。是非ともこの回のような企画を今後またやってほしいものです。
●『夢魔の幻獣辞典』【bk1】『裏切りの日々』【bk1】『砂の城の殺人』【bk1】『五瓶劇場』【bk1】『雨の恐竜』【bk1】読了

5月19日(土)〜25日(金)
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●『ヴァンパイア十字界』(城平京原作、木村有里画/スクエアエニックス) 【bk1】★★★★
 推理漫画からアタック・アンド・カウンター・アタックと言われる攻防に工夫を凝らしたトリッキーなバトルもの、果ては謀略系統の要素まで混ぜ込んだ『スパイラル―推理の絆―』の連載後期にこの作品の連載が開始された。『スパイラル』終了まで同時期に連載が為されていた故に、作者の苦労は並大抵のものではなかったと推察される。
 タイトルの「ヴァンパイア」とあることから容易に伺えるように、この作品は吸血鬼テーマの作品だ。が、ホラー作品ではなくSF作品。なんせ、ヴァンパイアと地球を征服せんが為に訪れた異星人との対決が一つの軸となるのだ。と言ってもその決着(正確にはバトル)は一瞬で、人間とヴァンパイアの丁々発止の騙しあいというか攻防が描かれる。侵略者への対抗策と人間とヴァンパイアとの攻防の二本立てという、じつにあり得ない構造になってはいる。
 この作品のどんでん返しや伏線のはりかたは尋常ではなく、ミステリではないもののミステリテイスト満載なのでミステリファンも必読だ(そういえば、「本ミス」のミステリ漫画紹介で紹介されていた気が)。或る意味山風の忍法帖に近いものもあり、もっと言うと、多島斗志之の初期謀略もの長編にも近いテイストが。いずれにも本格ミステリファン必読の傑作があるのだが、この作品はこれらの系譜につらなるべきものであろう。
 というわけで、ミステリファン必読の作品です。もし敬遠している人がいたら完結した機会に是非とも。
●『天使の眠り』【bk1】『警官倶楽部』【bk1】『図書館危機』【bk1】『伯爵の血族』【bk1】読了

5月26日(土)〜6月1日(金)
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●色んな意味でエンターテイメント漫画の最高峰の1つではないのかと考えている、少女漫画の前人未踏巻数へと向かっている『パタリロ!』。先日その80巻目が刊行されたんだけれども、ここ最近の巻には懐かしのキャラ再登場の話が少なくない。これは、来るべきクライマックスに向けての伏線張りなのか(つまり、クライマックスで再登場させてこの人誰? とならないように)、それともなんにも考えていないだけなのか。まあ、仮に前者だとしても、『パタリロ源氏物語!』が一段落つかないとなんともかんともしがたいだろうから、クライマックスと言うべき最終話はまだまだ先の話なんだろうけれども。尤も、既に最終話と言ってもおかしくない話は書かれているので、最終回は作者が死んでからなのかもしれないんだけれどもね(って、縁起でもない)。
●鬼束ちひろの2年7ヶ月ぶりのシングル「every home」、聴き中。テレビ露出も増えて結構嬉しい。「every home」の感想そのものは機会を改めて。
●『騙し絵の館』【bk1】『片眼の猿』【bk1】『毒草師』【bk1】『忌憶』【bk1】『ROMES 06』【bk1】読了。

6月2日(土)〜8日(金)
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業務日誌6/7の情報で狂喜乱舞。「なお、T・S・ストリブリングのポジオリ教授、幻の第2期シリーズ (『カリブ諸島の手がかり』 と 『事件簿』 のあいだの9篇) については、今秋再開する 《KAWADE MYSTERY》 で刊行予定。どうぞお楽しみに」とは! 訳者はやはり、倉阪鬼一郎でしょうか。
●『10ドルだって大金だ』【bk1】『グランダンの怪奇事件簿』【bk1】『怪人二十面相・伝』【bk1】『前巷説百物語』【bk1】読了。

6月9日(土)〜15日(金)
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●巡回先でも幾つかで触れてたけれども、はてなアンテナ以前にサイトの更新情報を発していたミステリ系更新されてますリンクが停止中。思ってたより言及しているサイトが少ないのはアンテナ等に移行してしまってるからなのか。私もだいぶんアンテナに巡回サイトをつっこんでるのでさほど影響はないものの、このまま消えゆくのは寂しい。
●『首無の如き祟るもの』【bk1】『赤毛のレドメイン家』【bk1】『トリックスターズC PART1』【bk1】『トリックスターズC PART2』【bk1】『百舌の叫ぶ夜』【bk1】読了。

6月16日(土)〜22日(金)
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●「天才刑事 野呂盆六 スワンの涙」★★☆
 名著『越境する本格ミステリ』でこのシリーズが紹介されており、以前再放送でシリーズの作品のひとつを見て面白かったので今回テレ朝系列での放送を観賞。
 結論を書くと、良くも悪くも土曜ワイド劇場の作品という感じ。いや、今回は土曜ワイド劇場の枠の放送だったんだけれども(以前はTBS系列の放送だったようだ)、なんかステレオタイプの2時間サスペンスという感じなのだ。コロンボ直系の作品ではあるものの、色々と物足りないところがあるのに加えて演出が古くさすぎる。さほど期待はしてなかったものの、これほどの面白くなさとは。京都を舞台にしてはいるものの、京都を舞台にする必然性が全くと言っていい程なく、単に出演者の慰安旅行を兼ねてたんでは、と思うほど。是非とも続編があればこれ以上のものを望みたい。
●幾つかのサイトによると、朝日ソノラマが店を畳むらしい。ソノラマ文庫はあまり読んでいる訳ではないけれども、やはりチョット寂しい気がする。
●『ストップ・プレス』【bk1】『本格ミステリ07』【bk1】『求婚の密室』読了。

6月23日(土)〜29日(金)
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 小野不由美の《十二国記》のようにはいかなかったのね。
●『霊名イザヤ』【bk1】『疑惑の影』【bk1】『芥子の花』【bk1】『第四の敵』『囁く百合』【bk1】読了。

6月30日(土)〜7月6日(金)
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講談社ノベルス25周年記念復刊企画(監修:有栖川有栖・綾辻行人) 刊行ラインナップ決定!と言うのは結構面白い企画かも。ラインナップは
 
8月8日刊行予定
 辻真先『急行エトロフ殺人事件』
 竹本健治『狂い壁狂い窓』
 連城三紀彦『敗北への凱旋』
 
9月8日刊行予定
 都筑道夫『新顎十郎捕物帖』
 戸川昌子『火の接吻』
 多島斗志之『<移情閣>ゲーム』
 
10月6日刊行予定
 皆川博子『聖女の島』
 阿井渉介『列車消失』
 中西智明『消失!』
 
11月8日刊行予定
 今邑彩『金雀枝荘の殺人』
 井上雅彦『竹馬男の犯罪』
 江坂遊『仕掛け花火』
 
 となってるけれども、『火の接吻』と『聖女の島』は扶桑社文庫の《昭和ミステリ秘宝》で再刊されてまだ現役のはず。更に言うと、後者は『花の旅 夜の旅』とのカップリングで《昭和ミステリ秘宝》の方がお得のような。まあ、講談社ノベルスの版型で出すことに意義があるのであろうが、部数はどれくらい刷るのか。その辺気になるところ。多島斗志之の『<移情閣>ゲーム』(『龍の議定書』の元タイトル)の再刊は素直に嬉しい。伝説の名作(迷作?)、中西智明の『消失!』も嬉しい限り。また、もう一個気になるのは『新顎十郎捕物帖』は1冊目のみの再刊なのか2冊を合本にしたものなのかということ。
 この企画、恐らくは「メフィスト」の対談企画のスピンオフなんだろうと思う。なんにせよ、これは好企画なので是非とも成功して欲しい。
●『死の接吻』【bk1】『白楼夢』【bk1】『夜愁(上)』【bk1】『夜愁(下)』【bk1】読了。

7月7日(土)〜13日(金)
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●「SAW3」★★★
 サイコサスペンスシリーズ(と言うよりスプラッタシリーズか)第3弾。
ジグソー≠ノよって拉致され、無理矢理ゲームに参加させられたのは1人の女医と息子を亡くし、復讐に燃える父親と息子の氏に関係のある物。このゲームの行方は如何。
 前2作に続いて何かを仕掛けてはいるのであるが、片方は割と早い段階で割れる。とは言え、これは或る意味目くらましであり、一個読んだからといい気になっている観客への牽制かも。もう一つはシリーズを順を追っている人ほど驚愕はありはするものの、前2作に比べると小粒な印象が。それくらい前2作が大がかりで素晴らしかった、と言うことになるのであるが。
 いきなりこれを見る観客、と言うのは想定されていないのか前2作の真相とか惜しげもなくさらしている。それがこの作品の仕掛けに繋がっているんだけれども。前2作の未消化部分も消化されているので、前2作を見た人は必見。でも、物足りなさを覚えてしまうのは確かで。そう言う意味では残念な作品といえるかもしれない。
●『夜想』【bk1】『聚楽』【bk1】『狼花』【bk1】読了。

7月14日(土)〜20日(金)
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●この日誌も8周年。そして、サイト自体はもうすぐ10周年。思えば遠くへ来たもんだ、と。
●『禍家』【bk1】『幻の翼』【bk1】『人魚の血』『シェルター』【bk1】『クジラの彼』【bk1】『名もなき毒』【bk1】『砕かれた鍵』【bk1】読了。

7月21日(土)〜27日(金)
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●と言うわけで、鬼束ちひろ待望のニューシングル「every home」について。
 マキシシングルに「everyhome」「MAGICAL WORLD」「秘密」の3曲を収めたもの。インストゥルメンタルの収録は無し。
 前作「育つ雑草」がロックで方向転換したかと思われていたが、そうでもなく、やはりいつも通りのテイストだ。「everyhome」と「MAGICAL WORLD」は前者はピアノのみ、後者はピアノとチェロとピアノを前面に押し出した楽曲。ここだけのはなし、「everyhome」と「MAGICAL WORLD」を最初に続けて聴いたときは曲が変わったのに気づかなかった。それくらいこの2曲のテイストは近い。好みは後者で、非常に泣けるというか、復活したな、と思わされる歌詞だ。「ひとのように振る舞えなくて泣いてた」なんて鬼束ちひろにしか書けないし、歌えないと思う。
 3曲目の「秘密」は楽曲はチョット異色なテイストだけれども、歌詞そのものは従来のものの路線を踏襲している。
 ファンの中でも(主にmixiのコミュで)色々と批判はあるけれども、何はともあれ、私としては復活を素直に喜びたい。9月に早くも復活第2弾がリリースされるようなので、楽しみに待ちたい。
●『狂人の部屋』【bk1】『その男キリイ』『百万のマルコ』【bk1】『スペイン岬の謎』【bk1】読了。

7月28日(土)〜8月3日(金)
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●毎年恒例の真夏のルパン「ルパン三世 霧のエリューシヴ」。今回はなんと時間ものSFと言うことで楽しみにしていたのだが、ここ何年かのものと比べると出来は良い方、かも。純粋に時間ものSFとしてみると物足りないところとか、作中で登場人物に突っ込ませている箇所といった整合性にクエスチョンマークがついたりしたりするところも。とは言え、それなりに面白かったし、「ルパン三世」という枠に於いてはよく頑張った方かもしれない。
●『團十郎切腹事件』【bk1】『グリーン車の子供』【bk1】読了。

8月4日(土)〜10日(金)
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●「サイン」★★★
 シャマラン監督のSF作品。世界各地でミステリーサークルが頻出。アメリカの片田舎に棲む元牧師一家の近くでもミステリーサークルが出来ており、何かと物騒な出来事も。やがて、テレビではUFOの大編隊が中継され……。
 この作品は侵略テーマの作品ながらも宇宙人の侵攻を描かずに、地球の、1つの家族を描いている。或る意味侵略テーマSFのパロディと言えなくもなく、そう言う視点では面白い。淡々と侵攻の際の家族の日常を描く、と言う斬新な視点であるものの、それだけに終わっておりシャマラン監督と言うことでしていた期待をどうしてくれる、と言いたくはなってくるのだけれども。そう言う意味では残念な作品ではある。
●『暗号名サラマンダー』【bk1】『幽霊狩人カーナッキ』『フィッシュストーリー』【bk1】『アララテのアプルビイ』【bk1】読了。

8月11日(土)〜17日(金)
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●『わが推理小説零年』(山田風太郎/筑摩書房)【bk1
 山田風太郎の未刊行エッセイを集成したものの第1弾。タイトルから伺えるように、ミステリ関係のものが多く収録されている。
 光文社文庫の《山田風太郎ミステリー傑作選》や出版芸術社の《山田風太郎コレクション》で山風ミステリの全貌がほぼ明らかになったが、そのミステリの書き手としての山田風太郎の顔が伺えるのが本書収録のエッセイの数々。作者の没後刊行された日記にも同じ文章が収録されていると思われる表題作は、別冊新評の特集に発表された際作者のつっこみなんかも加味されており、これはこれで存在価値がある。また、方々で書かれている『妖異金瓶梅』が忍法帖への橋渡しになっている、と言うのは本書完全収録の「風眼帖」に記されている。他にも、作品評に対する照れなんかもあって微笑ましい面も。
 本書を皮切りに何冊か未刊行エッセイが本になるらしい。実に嬉しいことで、編者には感謝感激雨霰。
●『チーム・バチスタの栄光』【bk1】『鮮血のヴァンパイヤー』【bk1】『タイタニック号の殺人』【bk1】『天帝のつかわせる御矢』【bk1】『人柱はミイラと出会う』【bk1】読了。

8月18日(土)〜24日(金)
http://ha1.seikyou.ne.jp/home/arasiyama/diary0705_08.html#d18_24
●「メフィスト」の対談企画、綾辻行人と有栖川有栖の「ミステリジョッキー」今回は番外編で講談社ノベルスの復刊企画について。で、読んでいて一番の驚きだったのは、刊行ラインナップの1冊である多島斗志之の『<移情閣>ゲーム』(文庫版タイトル『龍の議定書』)が故宇山秀雄が書かせた作品であった、と言うこと。意外や意外というか、以降の初期謀略もの作品の異様なまでのトリッキーさを考えると言われてみれば当然というかなんというか。
●『ナイチンゲールの沈黙』【bk1】『アリントン邸の怪事件』【bk1】『ヒンデンブルク号の殺人』【bk1】『漱石先生の事件簿 猫の巻』【bk1】読了。

8月25日(土)〜31日(金)
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●『星新一 1001話をつくった人』(最相葉月/新潮社)【bk1】 ★★★★★
 星新一というとSF界の大立て者の1人で、トップランナーだった人で、今でも現役で文庫で読める作家という印象しかない。かなり昔に新潮文庫の作品数冊を読んだっきりで以降一冊も読んでいないと言う状況。機会があってショートショート数編は読んだ記憶はありはする(追悼特集の再録作とか)。
 で、本書は最相葉月が様々な関係者へのインタビューを行い、遺品を整理した結果判明した星新一という作家の足跡が描かれている。作家星新一と言うより寧ろ人間星「親一」を描いた評伝と言うことができるであろう。奇しくもというか必然的にと言うか、SFというジャンルの勃興期の様々な経緯も丹念に描かれている。
 星新一のデビューは乱歩編集の探偵小説誌旧「宝石」に「セキストラ」が掲載されたことであるが、そこに至る経緯の1つ1つが面白い。また、何故星新一が小説を書くに至ったかというプロセス、賞に拘ったその心情、星新一最愛の弟子の話など興味は尽きない。
 本書はどちらかというとSF寄りのエピソードが大半だが(当たり前か)、ミステリ方面からも見逃すことができない記述がある。それは、綾辻行人や法月綸太郎、歌野晶午や京極夏彦に森博嗣と言った面々のデビュー、ひいてはミステリ史に影響という言葉では計り知れないものをもたらした講談社の文三の創設が星新一にあったと言うところだ。星新一作品を講談社で書籍にしたり、その他のSFに対応するために新設されたのが文三だったらしいのだ。また、ショートショートコンテストの下読みを編集者がする、というのはメフィスト賞にも通じるものがあり興味深い。ミステリ史の流れに影響を与えたのは中井英夫の文庫化だけではなく、星新一というSFの大立て者の影があったという事実は衝撃であった。その辺に関しての名伯楽宇山秀雄の存在の記述もある
 本書は来年の日本推理作家協会賞の評論部門で候補に挙がることは間違いなく、もしかすると受賞と言うことになるかも。……と思うくらい凄い本です。SFファンはもとより、何らかの形で星新一作品を読んだことのある人は必読。
●『ウォンドルズ・パーヴァの謎』【bk1】『サム・ホーソーンの事件簿X』【bk1】『エンド・クレジットに最適の夏』【bk1】『四神金赤館銀青館不可能殺人』【bk1】読了。


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