航海日誌第五話 PNG編

「パプア君の居た町は今」

 話がどんどん長くなってしまいましたが,今回はやっとPNGの地での話.急速に近代化しつつある首都ポートモレスビーでの体験です.昔パプア君の居たこの国は今はどうなっているのでしょう.それと,夜間外出禁止となるほどの治安の悪化とはどれほどなのでしょう.今回はちょっと笑えるネタに乏しいかな(いつもですね,済みません).


 空港を出るとそこはとうとうPNGの地.真上から照りつける太陽が乾燥した空気を通り抜け降り注いできた.空港は平屋建てなので,外に出るとすぐタクシーや送迎の車でごったがえしていた.

 ところで,パプアニューギニアという国の名の由来を皆さんはご存じだろうか.人に聞いた話では,この国の人々と最初に交流した英国人(?)が,人々の肌の色の黒さがギニア人と同じくらい黒かったということで新しいギニア,すなわちニューギニアとなったらしい.確かに,この国の人々はかなり色の黒い人種と思われる.真っ黒である(でも,ギニア人ほどではない).でも,男性の背丈は165cm前後で,僕と同じくらいかそれより低い人が多い.中肉で横幅はがっしりしているが,背が低いので威圧感がない.女性は男性よりやや背が高い傾向が見受けられ,スマートな人が多い.

 途上国の常で,空港には多くの人が意味も無くたむろしているが,それほど恐いところだとは感じなかった.夜間外出禁止になるほどの治安の悪化とは何なのだろう.と,足下を見ると… そこら中に血痕のような赤いシミが路上についている.しかも,何となく鼻をつく異臭….もしや,空港に降り立った外国人は皆ここで料理されるのだろうか….それはまさしく,「料理される」という言葉通りの恐怖を掻き立てた.少しおびえていると,同行した研究者がその赤いシミがこの国独特の噛みタバコの一種であることを教えてくれた.なるほど,男性の多くは口の中を真っ赤にして何か噛み噛みしている.別に肉汁を滴らせているわけではなさそうだ.それによく見ると,赤いシミはどちらかというとオレンジ色に近く,どす黒いシミとなる血痕とは違うようだった.

 この日はポートモレスビーで一泊する予定だったので,我々一行は安全を金で買うため予約しておいた,この都市でほぼ最高級のホテルに迎えの車をよこすように頼んだ.同行していた現地人のゲナさんは自分の出身大学に戻って友人に泊めてもらうとのことで,いったん空港で分かれた.10分ほどしてやってきた迎えの車は,9人乗りのトヨタのバンでボディーは錆が目立ったが,Tシャツ姿の運転手は高級ホテルから派遣されたものらしく,我々を冷たいおしぼりとフレッシュジュースでもてなしてくれた.ちなみに,飛行機内もそうだったがこの国のジュースは日本の50円アイスのようなビニールを張り付けたような蓋の底の浅いプラスチックの容器に入っているものが普通のようだ.もちろん缶ジュースの自販機は存在するが.

 ホテル到着後,日暮れまで3時間ほどあったので我々は町に繰り出してみた.人間の生活に伴う異臭が熱帯の気候のせいか町中にこもっている.それに,相変わらずあちこちに赤いシミがついているが,複数のショッピングビルやスーパー,航空会社の真新しいビル,高級マンションが1キロ四方くらいのスペースにゆっくりと配置された片田舎的な町であった.クリスマスセールもまっただ中で,多少の活気もあった.木陰にたむろしている人々が多いが,別段殺気立っている訳ではない.日本で言うとケンタッキーにあたるようなフライドチキンを売っているファーストフード店が一軒あり,その店の包装紙が町中に散乱しているのを見ると,あながち荒んでいない訳でもないのが分かる.乾燥気候のため陸地は茶色い部分が多いが,海は南国特有のエメラルドグリーンを放ち,造船所などあるが綺麗である.近くにビーチもあったが,日が暮れるまで大して時間もないので泳ぐのはあきらめた.ホテルにプールもあったしね.

 帰国時にこの都市の他の町(高級住宅街)を見て分かったが,侵入者避けのトタンの波板を柵替わりに家中に巡らしているところが多い.侵入しようとすると音が鳴るし中が見えないのがいいらしい.結局のところ,この国の治安悪化とは次のようなことらしい.平地部は開発が進行中のため職もあるしお金も入る.しかし,山岳部では職はなくだんだん文明化していくこの国では住む場所による貧富の差が拡大しお金がないと生活が難しくなってくる.そこで,夜な夜な山間部の貧しい人々が低地の町に降りてきて悪さをするらしい.町の人々もそれを嫌って夜間は外出を避けているようだった.山間部では昔ながらの生活を送っている部族生活者が多いが,都市部との物流が文明化によりお金を伴うようになり,物質の流れが躊躇し始めたのであろう.途上国でどこにでも見られる貧富の差がやはり治安の悪化という形で現れているようである.


View of PortmolesvieMr. Corl Gena

 左は現地の観光スポットらしい(?)岬のビューポイントから眺めたポートモレスビーの景色です.前回は海岸沿いのビーチが多い表側でしたが,この裏側の海は港や造船所があります.右の写真はPNGの研究者のゲナさん.彼はこの国の超エリートで将来の約束された身.現在秋田大学で勉強中.本人に承諾無く写真を乗せているのでちょっと俯き気味のやつにしました.ゲナさんごめんなさい.向こうでは大変お世話になりました.ラガーマンで頼りがいのある人でした.


 次回は,いよいよ調査船に乗るためにPNG最北端のケビエンに移動.綺麗な南の島で起こったハプニングを紹介したいと思います.


次回 いよいよ最終回

第六話 「パプア君はやっぱり素敵だった」編


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