航海日誌第八話 沖縄編

朝から魚が食べられる幸福

 JAMSTECの船の食事は3食必ず魚がでます.一日の食費は1414円ですが,とても豪華な内容です.その理由は,「なつしま」を運行しているのは「日本海洋事業」という,日水(日本水産)系列の会社なのですが,そのため日水からやすく食材が入るらしいのです.“その日”の朝も,しっかり焼き魚が朝から食卓に上りました.毎食残さず食べるとぶくぶくに太るか胃を悪くして入院しそうなくらいの量がでます.羨ましいでしょう.もし,あなたがそれを食べれる状態なら.


 航海3日目.激しい揺れのため,あまり熟睡できなかったが酔ってはいない.この日,朝食の時間を勘違いし,僕の部屋の3人は朝食のチャイムを聞き逃し,思いっきり寝過ごした.心配した他室の研究者が起こしにきてくれて,「いや〜,あんまり揺れるんでみんな起きれないほど酔っちゃてるんじゃないかと心配しました.」と言われてしまった.実際他室の学生が一人再起不能であった.

 僕ら同室の3人は比較的平気で,まっすぐ歩けないほどの船内を,この日潜行がないのをいいことにさまよったり,パソコンに向かったり,本を読んだりして過ごした.ちなみに,僕以外の2名は同じ大学の同じ研究室の学生さんだったが,一人は30代半ば,もう一人は20代前半と最初見たときは教官と学生みたいなコンビだった.年長の方は全く船酔いを知らないみたいだったが,若年の方は「横になってると平気」とのたまって,船内の備品の漫画本を読みふけっていた.この日のミーティングで台風が直撃しそうだという話になり,夕食直後から台風を避けるため,船は宮古島の島影に移動を始めた.ここで,JAMSTECの船についてもう一つ付け加えておかなければならない.それは,この「なつしま」はとっても船足が遅いことでもまたまた有名なのである.逃げると決めたら早めに移動を始めないと目的地になかなか着かないのである.

 翌日の朝食,まだ,島影には入っておらず,激しい揺れであった.船員さんの話では速力は6ノット.時速約11Kmである.水上を歩けるものなら歩いた方が早い速度だ.でも,何とかその日の昼食の時間には島影に入ることができ,ようやく揺れは落ち着いた.

 今回僕が乗船させて頂き,与えられた役割は,採水器の組立作業である.僕と僕を乗せてくれた同じ大学の先生と他の大学の学生さん一人が採水器を扱えることになっていたが,もう一人の学生さんは,船酔いが激しく,以前に乗船したときも,就航直後から寝込んでしまい採水器の組立を実際にやったことがあまりないらしい.僕はずいぶんと期待されて乗せて頂いたわけだ.このまま台風が北上すれば明後日からは潜行を再開できるだろうという話だったので,島影にいる間に採水器の組立をやっておこうと思った.しかし,今後,採水器を僕以上に使う機会が多いもう一人の学生さん(水の研究をなさっている.僕は泥の研究)にその由を伝えると,「今回は酔いそうにないので,僕が組み立てときますよ.」という頼もしい返事.それなら,僕は遠慮しておこうと,島影の静かな2日間(3,4日目)をパソコンに向き合って過ごした.

 5日目の朝,船は動いていた.激しく揺れている.波が高く,うねりの波長が長いのか左右上下に揺れるというか,ローリングしていると言った表現がぴったしくる気持ちの悪い揺れ方だ.朝食をとりながら,船長から調査海域に向かっている由を聞いた.察するに船足の遅いこの船では,波が高いと進まないので,早めに島影を後にしたのであろう.この日の朝食はヒジキと鰯の焼き物だったと思う.同じ大学の先生が食後に僕にささやいた.「採水器を今から組み立てましょう」.見渡すと,一昨日頼もしい返事をくれた彼の姿がない.朝食に来てはいたが,ほとんど食べずにすぐ引っ込んだようだ.まあ,僕は平気だから「いいですよ,今すぐやりましょう.」と朝食直後から採水器の組立にかかることにした.

 これが,「しんかい2000」に取り付けられた採水器です.12本のチューブがついており,1回で3〜4本ずつ採水します.採水口はマニュピレーターの先にチタンの棒を握って行います.詳しい仕組みはいずれ機会を見てお話しします.


 さて,今回も無事でした.今後どうなるんでしょうね? ヒジキはちゃんと消化できるでしょうか.焼き魚は山中の体の一部になれるでしょうか.

第九話

「なにもかも虚しかった沖縄の海」編


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