第三回総会 第一号議案

1994年度の活動のまとめ

 阪神・淡路大震災とその後の事態は、日本の社会システムが転機にあることをくりかえし明らかにしている。日本の協同組合運動についても、この間転換期認識の共有化が進んだが、事態はさらに先行していまや変革期の様相を呈しつつある。こうした中にあって、組合員や役職員に開かれ、かつ高い研究水準のシンクタンクをめざす「くらしと協同の研究所」にたいして強い期待が寄せられている。事業活動の「広域化」と「地域化」の条件も着実に広がってきている。一方、「くらしと協同の研究所」も設立から二年余りを経過して、常設研究会のあり方や事務局体制の問題など、さまざまな問題点や課題が明らかになってきており、事業活動全般にわたって抜本的な見直しと改善が必要となってきている。以上のような背景と到達点をふまえて、あらためて中長期計画の必要性が迫られている。

1.常設研究会・常設講座

 今期新たに発足した常設研究会は、「フォーラム・女性と協同組合」(代表、上野勝代京都府立大学教授)、「中小企業と協同組合」(代表、二場邦彦立命館大学教授)、「ヒロシマくらしと協同の研究会」(田中秀樹広島大学助教授)、「消費組合の歴史研究会」(青木郁夫阪南大学助教授)であった。

 「職員論研究会」(代表、戸木田嘉久立命館大学名誉教授)は1994年7〜8月に「1994年生協職員論のためのリサーチ」を実施し、その成果を『1994年生協職員論のためのリサーチ−意識動向と労働実態の調査中間報告−』として刊行した。また、その成果の一部については三好正巳立命館大学教授が11月に開催された生協総合研究所の創立5周年記念シンポジウム「新しい時代の仕事のあり方と職員問題−民主的経営と生協における労働の課題−」において報告した。「農村地域研究会」(代表、馬場富太郎京都府立大学助手)は1994年12月〜1995年1月に「くらしと地域づくりのための女性アンケート調査」を実施した。「組合員活動研究会」(代表、井上英之大阪音楽大学教授)は1997年度内の出版をめざして調査や研究会を積み重ねている。「社会経済システム研究会」(代表、川口清史立命館大学教授)は、1995年度内の出版に向けて東京と京都で交互に研究会を積み重ねてきたが、1995年2月にはイタリア、ベルギー、フランスの海外調査をおこなった。

 「田中恒子ゼミナール」は25人の生協組合員と職員が登録して出発した。その後、毎月20人ほどの出席者が熱心にくらしの問題や調査論について議論してきたが、1995年4月のゼミナールからは個人別論文指導がはじまった。参加者の中からは、『協う』『研究年報』の編集員や生協の理事になる人材も出てきている。

 これにたいして、個別の対応が不十分であったり、やむをえない事情のために、いくつかの常設研究会が活動休止状態にあり、また予定していた常設研究会や常設講座が開設されないなど問題も残した。

2.調査研究プロジェクト

 「協同組合間協同調査研究プロジェクト」(代表、藤谷築次京都大学教授)では、その成果の一部を藤谷築次代表が1994年7月の国際協同組合デー京都集会において報告し、その後出版に向けて執筆者間の調整をおこなってきた。また、1995年7月の国際協同組合デーでは、増田佳昭滋賀県立大学助教授が基調報告をおこなった。

 「生協運動の現状分析プロジェクト」(代表、野村秀和京都大学教授)は、1995年4月に、コープかごしま、宮崎県民生協、5月に生協ひろしまを訪問してヒアリング調査をおこなった。また、8月には生協総合研究所との合同調査として北海道、東北方面の生協調査をおこなった。

3.自主研究・自主講座

 1995年度分として募集した研究費助成にたいして、8件の応募があり、次の7件について総額100万円の助成をおこなうことになった。「民主的経営」(代表、有田光雄)、「世界の生協運動の普遍性と特殊性−スウェーデンの場合−」(代表、大田黒幸司)、「京都の高齢者状態と高齢者施策の充実方向」(代表、岡崎祐司)、「京都生協府内産直グリーンBOX10年」(代表、加川一恵)、「老親(人)介護と社会サービスの手法」(山藤和子)、「ボランティア元年としての阪神・淡路大震災−ボランティア活動基地における実状と人々の意識−」(服部淳子)、「軽症痴呆患者に対するリハビリテーションメニューおよびシステムの開発とその詳細について」(代表、藤本直規)

 なお1993/4年度分の成果報告書については、募集期間を延長したために締切が1995年10月31日となっている。

4.シンポジウム

 第2回総会シンポジウムとして、「地方からつくる21世紀の生協運動」を開催した。榛村純一掛川市長が記念講演(「地域づくりと協同組合と生涯学習−随所の時代に選択土着民がこれっしか文化を磨く−」)をおこない、大久保弘幸宮崎県民生協専務理事と山元慶光前宮崎県経済連直販(株)専務の基調報告にもとづいて、パネルディスカッションがおこなわれた。この成果は、1994年12月に『第2回総会記念シンポジウム報告集・地方からつくる21世紀の生協運動』として刊行された。

 なお、当初1995年2月に予定されていた「瀬戸内プレシンポジウム・競争と協同の現局面−中四国の現状と生協運動の課題−」は阪神・淡路大震災の勃発により6月3〜4日に延期された。「瀬戸内プレシンポジウム」では、増田大成コープこうべ副組合長が「コープこうべの創造的復興と生協の戦略的課題−大震災からの教訓と生協運動の役割−」と題して、野村秀和京都大学教授が「今、なぜイズミの分析か−協同と競合の地域性と普遍性−」と題して基調講演をおこなった。

5.公開講座・講演会

 公開講座委員会(代表、上野勝代京都府立大学教授)では、1994年10月から1995年7月にかけて9回にわたって講座を開催した。第一回「国際家族年を考える−家族、女性、子ども−」(久米弘子弁護士)、第二回「くらしの変化とカード社会」(甲斐道太郎京都学園大学教授)、第三回「規制緩和と生協−くらしの視点から価格破壊競争を斬る−」(野村秀和京都大学教授)、第四回「阪神大震災・高齢者・住まい」(水野弘之京都府立大学教授)、第五回「屋内大気汚染と私たちの健康」(泉邦彦京都工芸繊維大学助教授)、第六回「アースデイと環境問題」(原強京都消費者団体連絡協議会事務局長)、第七回「新しいくらし方」(吉野正治佛教大学教授)、第八回「高齢期のくらしと社会福祉」(浜岡政好佛教大学教授)、第九回「男女共同参画社会と協同組合」(真鍋宗平氏・地域デザイン研究所、上野勝代京都府立大学教授、末川千穂子京都生協副理事長、立川百恵コープえひめ理事長、吉永紀明おかやまコープ理事長)

 国際交流委員会(代表、中村尚司龍谷大学教授)は、「連続講座・アジアの地域社会と協同組合」を1994年9月から12月にかけて4回にわたって開催した。第一回「アジアの中の日本−地域からの経済的自立のために」(モンテ・カセム立命館大学教授)、第二回「農村の社会発展と協同組合−バングラディシュの事例から−」(安藤和雄京都大学東南アジア研究所研修員)、第三回「日本企業の海外進出−フィリピンの事例から−」(森澤恵子大阪市立大学教授)、第四回「アジアの地域社会と協同組合」(中村尚司龍谷大学教授)

 国際交流委員会は1994年9月26日、ハンス・H・ミュンクナー・マールブルグ大学教授を迎えて国際協同組合同盟特別講演会「協同組合の価値・原則・将来ビジョン」を開催した。

6.『協う』『研究年報』『ワーキングペーパー』

 情報交換と交流のための月刊誌『協う』(代表、井上英之大阪音楽大学教授)は、第8号から第19号まで毎月定期的に発行することができた。1995年11月に研究年報(代表、浜岡政好佛教大学教授)の創刊号として『協同の社会システム』を刊行した。ワーキングペーパーの第一号として、『協う別冊・ROCHDALE EQUITABLE PIONEERS SOCIETY Ltd.いま問うロッチデール公正開拓者組合の意味』を1994年11月に刊行した。1995年8月には、新しいデザインに統一したワーキングペーパーの第一号として、『男女共同参画社会の条件』と『1995年瀬戸内プレシンポジウム・競争と協同の現局面−中四国の現状と生協運動の課題−』を刊行した。

7.委託研究

 1994年度分として、上掛利博京都府立大学女子短期大学部助教授に在外研究「ノルウェーにおける女性と福祉のあり方に関する調査研究」を委託した。

8.受託事業、その他

 1993年度に続いて、西新道錦会商店街振興組合と京都生活協同組合の委託による「壬生地域のまちづくりと消費者ニーズに関する調査」を実施した。その結果は1994年10月に報告書として刊行した。また、1995年4月30日に京都において開催された「全国下町商店街サミット」では、企画から実施までのコーディネートを請け負った。

 1995年6月より、生協しまねの第4次中計策定にむけた調査に関連して意見調整をはかっている。

9.交流・協力・提携

 生協総合研究所との共同企画事業として「社会経済システム研究会」(生協総研の名称は「事業と組織研究会・基礎理論部会」)を東京と京都で交互に開催した。1995年6月16日には、生協総合研究所と共同で「社会的経済・協同経済ミニシンポジウム−参加型社会システムは可能か?−」を開催した。

 生協総合研究所の1995年度および1996年度の全国研究集会「転換期の生協とマネジメント」(座長、野村秀和京都大学教授)に協力して、くらしと協同の研究所はコープこうべと京都生協の調査分析を担当することになった。7月以降、コープこうべ生協研究機構の支援のもとに「コープこうべの創造的復興」過程に関する調査研究を実施してきた。これには、生協総合研究所および地域と協同の研究センターからの参加者も含まれる。

 国際交流委員会は、5月21日カナダ・ヴィクトリア大学教授イアン・マクファーソン夫妻のために歓迎夕食会を催し、カナダにおける協同組合運動の実態と国際協同組合同盟における「原則改定問題」などについて意見交換をおこなった。また、9月26日には、ハンス・H・ミュンクナー夫妻と令嬢のために歓迎夕食会を催し、ドイツおよびアフリカにおける農業と協同組合の問題等について意見交換をおこなった。