『協う』2007年12月号 探訪・くらしとコミュニティ1
特集:循環型社会と生活協同組合


資源循環を通した生協・農家・組合員のつながり
〜環境共生型農園 「エコファーム」 での取り組み〜

上野 育子 (京都大学大学院 地球環境学舎 修士課程、 『協う』 編集委員)

 瀬戸内海に面する兵庫県の市街地から六甲山を超えて車で約一時間、 環境共生型農園 「エコファーム」 は山と澄んだ空気に囲まれた兵庫県三木市細川町にある。 「エコファーム」 には、 コープこうべの 「コープ土づくりセンター」 と 「(有)みずほ協同農園」 があり、 堆肥作りを通した生産者と消費者の交流、 そして資源の循環が見られる農園である。
「エコファーム」 のこれまでの歩みや今の状況、 課題などについて、 宮地毅氏 (コープ土づくりセンター統括)、 永見猛氏 ((有)みずほ協同農園取締役) にお聞きした。

環境共生型農園 「エコファーム」  
  「エコファーム」 の設立構想は阪神・淡路大震災前に遡る。 コープこうべでは事業所から排出される廃棄物―商品づくりの過程で出る廃棄物や売れ残り商品、 食品工場の製造ロスなど―の堆肥化が検討されていた。 堆肥をつくれば使用する場所が必要なため、 同時に、 農場も含めた資源循環型農園の設立が構想されたのである。 1995年5月から作物栽培に適した堆肥の研究が着手され、 1998年に 「コープ土づくりセンター」 が稼動し、 「(有)みずほ協同農園」 が地元農家によって設立された。 コープこうべ創立80周年に合わせて、 「コープ土づくりセンター」 と 「(有)みずほ協同農園」 は、 環境共生型農園 「エコファーム」 として2001年にグランドオープンした。
  「エコファーム」 は、 廃棄物を有効活用し、 物質の循環をつくり上げたいコープこうべと、 畑地を活性化させたい地元農家の思いが一つになった農園である。 「エコファーム」 のある細川町瑞穂は酒米の山田錦の産地であるが、 畑地については充分活用されていない状況にあった。 「環境共生型農園構想」 では、 環境に配慮した農業を行うこと、 地元農家の牛糞を堆肥の原料として利用すること、 原料はコープこうべからのものに限定すること、 また、 「コープ土づくりセンター」 での臭気や排水に対する徹底管理などが明示されており、 地元の全農家26戸が賛同することとなった。
  では、 「エコファーム」 を構成する 「コープ土づくりセンター」 と 「(有)みずほ協同農園」 がそれぞれ取り組んでいる事業を見てみよう。 まずは、 1998年の稼動当初から 「コープ土づくりセンター」 に携わっていらっしゃるコープこうべの宮地毅氏が 「コープ土づくりセンター」 を案内して下さった。

コープ土づくりセンター  
  「コープ土づくりセンター」 では、 コープこうべの神戸市と三木市にある33店舗と六甲アイランド食品工場から出る有機資源 (加工くずなど) を回収し堆肥を生産している。 有機資源に牛糞と籾殻を加え、 発酵槽で約2週間発酵させた後、 養生槽に移動させて約6週間熟成させる。 堆肥が完成するまでに約2ヶ月間かかり、 年間約700〜900tの堆肥が生産されている。 堆肥の原料は、 約900tの食品廃棄物と、 200〜300tの牛糞(地元の肥育農家から購入)と籾殻(加西市のライスセンターなどから購入)である。 完成した堆肥のほとんどは、 「(有)みずほ協同農園」 で利用されるが、 「エコファーム」 への来訪者や地元の農家も袋詰めされた堆肥を買いに来るという。 「ここの堆肥で作った野菜は一味違う」 とその品質も好評のようだ。
  このような 「コープ土づくりセンター」 であるが、 堆肥化施設の建設は臭気や排水をめぐって問題にされ、 一般的に反対されることが多い。 地元農家から賛同を得た 「コープ土づくりセンター」 では、 どのような管理が行われているのか施設内を見学させていただいた。

臭気・汚水対策  
  まず、 発酵槽では、 空気を送りながら撹拌機で堆肥原料を攪拌するが、 好気性発酵によって温度は60〜80℃にまで上昇する。 発酵過程でアンモニアや硫化水素などの悪臭物質が発生するため、 発酵槽には臭気対策用に防臭フードがかぶせてあり、 フード内の臭気は微生物脱臭槽に送られる。 微生物脱臭槽では、 微生物がアンモニアや硫化水素を分解するが、 90数%の脱臭効果がある。 施設周辺は農地であるが、 アンモニア濃度は悪臭防止法の基準である1ppm未満のレベルにまで抑えられている。
  しかし、 人間の鼻は 「におい」 に敏感だ。 施設に隣接するゴルフ場から苦情が来たのである。 そのため、 何時にどこで臭いがあったかゴルフ場側で記録してもらい、 毎月定期的に情報交換を行ったが発生源は特定できなかった。 そこで、 撹拌機の稼動時間をゴルフ場の利用者が減る夕方3時以降に変更した。 また、 循環水の改善も臭気を抑えるのに効果があったとされている。 発酵槽では高温により原料に含まれる水分が蒸発するが、 水分調節のために発酵過程で原料が分解されて出てくる水分を集めて再び原料に散布している。 この循環水が嫌気状態にあり、 散水によって好気性発酵を阻害している可能性があったため、 循環水を好気性に保つ施設を併設し、 その水を発酵槽に散水することで好気性発酵を維持し、 臭いを抑制できた、 という。 「コープ土づくりセンター」 ではこのように水を循環して利用しているため、 汚水の排出は全くないのである。
  このような 「コープ土づくりセンター」 でつくられた堆肥を使っている 「(有)みずほ協同農園」 を、 永見猛氏が案内して下さった。

「(有)みずほ協同農園」 の取り組み  
  「(有)みずほ協同農園」 は地元の全農家26戸により設立された。 約13haの畑作地で、 コープこうべに出荷する野菜の栽培だけではなく、 体験農園(貸し農園)、 マイファーム(ミニ農園オーナー制度)、 エコファームクラブ(農作業ボランティア)、 エコファーム講座(栽培技術講座、 加工食品作りなど)、 視察や学校の体験学習の受け入れも行っている。 中でも人気なのが、 体験農園とマイファームである。 参加者は主にコープこうべの組合員だが、 一般市民が訪れることも稀ではない。
  体験農園では、 一区画10坪の農地を年間契約で借り、 作物の栽培が自由にできる。 一区画の年間の使用料は15,750円で、 堆肥や道具、 水道の使用料も含まれている。 もちろん堆肥は 「コープ土づくりセンター」 から提供される。 栽培初心者への講習が年四回行われ、 質問も随時可能であるため、 特に定年退職者に人気があるという。 六甲山の北側という立地のため、 週に4〜5回作業に来る人もいるそうだ。 設立当初100区画あったものが現在では449区画に増加した。 借り入れ区画数の制限はなく、 約300世帯が思い思いに作物を栽培している。
  マイファームは作付と収穫の体験ができるもので、 途中の栽培管理は農園側が当たってくれる。 一区画2,000円で種代、 肥料代込みの料金である。 現在では、 サツマイモ、 ダイコン・カブ、 タマネギ、 ジャガイモの4種で募集がある。 体験農園のようになかなか管理はできないが、 農作業体験をしたいという子連れの家族が多く参加しており、 リピーターは、 利用者の9割を超えている。 開催のたびに区画が増え、 現在ではサツマイモが約450区画、 ダイコン・カブが約400区画、 タマネギが約500区画、 ジャガイモが約450区画もある。
  このような企画を行って 「エコファーム」 を知る人が増えたことで、 農園やコープこうべで売られている農園の野菜に対する消費者の見方が変わったようだ。 「エコファームの野菜だ!」 と言って子どもが野菜に興味を示したり、 「あそこで作っているなら安心ね」 と購入する人が増えている。

「エコファーム」 の課題
  このような 「エコファーム」 であるが、 課題もいくつか挙げられる。 コープこうべでは、 食品リサイクル法に基づき、 食品廃棄物のリデュース、 リサイクルを行い、 食品工場の達成率は99.9%に達している。 「コープ土づくりセンター」 での食品廃棄物の利用も含めるとコープこうべ全体では56%のリサイクル率(厳密には廃棄物総量に対する削減・再生利用率)を達成している。 しかし、 食品リサイクル法の改正によって毎年食品廃棄物のリサイクル率を高めることが求められるようになるため、 改正法への対応が必要になる。 一方、 「コープ土づくりセンター」 はコストセンターとして位置づけられており、 経費の削減が課題となっている。 また、 現在では有機資源に混入しているビニールなどを全て取り除くことができず、 過去には堆肥を購入た人たちから苦情が出たこともあった。 いかにして分別の精度を上げ、 質の高い堆肥を生産するかも課題の一つである。
「エコファーム」では、冬野菜の収穫時期を迎えている。 寒い時には零下七度にまで気温が下がる瑞穂。 これから寒さが厳しくなるが作業は続けられ、 組合員の方々に美味しい野菜が届けられるのである。 そして、 店舗から出された有機資源は 「コープ土づくりセンター」 で堆肥にされ、 再び 「(有)みずほ協同農園」 で利用されるのである。