『協う』2009年4月号 生協の人・生協のモノ

地域再生をめざして〜法橋 聡さん(近畿労働金庫「地域共生推進室室長」)を訪ねて〜

長壁猛(『協う』編集委員会事務局)



「ろうきん」は協同組織
  最近テレビCMなどで「儲けない金融機関」というフレーズが茶の間に流れ、「ろうきん」という名前が一般に知られるようになってきた。労働金庫(「ろうきん」)は生協や農協と同じ非営利・協同組織だが、生協などとは違って、その加入資格は個人ではなく団体である。つまり団体の構成員であることが基本になる。一般市民は「勤労者互助会」という団体に一旦加入することで「ろうきん」を利用することが可能となるわけである。
  そのようなわかりにくさと労働組合、働く人の銀行というイメージもあって、一般市民からみるとまだ遠い存在なのかも知れない。
変わりつつある「ろうきん」
  その「ろうきん」が今、変わりつつある。今回は「近畿労働金庫」(「近畿ろうきん」)を訪ねてその取り組みとそれを可能にしたものは何かを法橋聡さんにうかがった。
  法橋さんは地域共生推進室の初代室長。実はこの部署は法橋さんらから生み出されたようなもので、98年の近畿ろうきん統合当時、総合企画室の一部署だった「地域福祉開発室」に法橋さんは配属され、まもなく大阪ボランティア協会に2年間出向する。地域社会で「ろうきん」が役割を果たすにしても、まずは地域を知らないといけない、という考えを実践に移したということだ。これが出発点となって「近畿ろうきん」は地域再生を金融面から支えていく役割を担っていくことになる。

地域再生のもつ意味は…
「近畿ろうきん」が地域再生事業にとりくむ理由を法橋さんのお話で紹介しよう。
  今も「ろうきん」の事業の多くは組合員である団体とその構成員の預金や融資を基本にすえている。しかし、「ろうきん」の組合員である労働者も地域に戻ると生活者として様々な問題を抱えている。それを地域でサポートしているのがNPOの人たちだ。そのNPOを支えるということは、「ろうきん」の組合員の生活を支えることにつながる。このような考えの根拠になっているのが1995年のICA大会で採択された第7原則「コミュニティへの関与」だ。協同組合は組合員だけを見るのではなく、公益の役割も果たしていくというこの第7原則は「ろうきん」が地域支援事業を推進していく理論的根拠になっている。
  しかしかつては、労働金庫は法律によって企業(事業)支援(融資)をすることが禁止され、あくまでも融資先は組合員であり、組合員の相互扶助に役立てることに限られていた。そのことから障害者共同作業所などから融資の要請があっても「ろうきん」は対応することができなかったのだが、NPOなどの地域再生の活動が広がりを見せ、少額融資の必要性が高まる中で、2004年の告示一部改正によってNPO法人の融資が可能となった。。
  1998年の介護保険法施行時、介護福祉事業のNPOの経営は深刻だった。それは介護の給付申請を行なってから給付を受け取るのに2〜3ケ月間を要するからだ。つまり給付を受けるまでのつなぎ資金をどうするかが切実だったわけだが、資産が脆弱なNPOを銀行が相手にしてくれるわけがない。そのような実情に対応する形で「ろうきん」は地域・住民の福祉増進のための資金という形をとって解決する糸口をつかんだ。これがマスコミにも取り上げられるようになり、社会的な関心を高める契機をつくり、告示改正をさせる後押しとなったのである。

地域の共生をめざして
  「ろうきん」は地域再生を金融機能で支えるだけではなく、労働者と地域のNPOをつなぐ役割に、そのウイングを広げている。つまり、人を必要とするNPOと「何かをしたい」という労働者をつなぐ橋渡しを「紹介」という形でつないでいる。最後に法橋さんは「地域においては生協、「ろうきん」、NPOは同じ非営利・協同セクターという位置にあり、生協はその地域で生活する人たちを組合員として組織している。この三者が協同してとりくむことができれば地域再生はより進化をとげると思う。」と語った。この思いを生協はどのように受け止めるのか。組合員のくらしに寄り添って生協の資源を地域再生に活用することは、事業の継続にも決してマイナスにはならないのではと思った。