2001年6月号
人モノ地域2


「くらしと協同の研究所」の将来はどうあるべきなのか?

くらしと協同の研究所は、 設立して8年が経とうとしています。 当研究所の研究委員会幹事会は、 昨年から、 これまでの研究所の活動の振り返りと今後の研究所の方向性についての検討をすすめてきました。 将来のあり方については、 的場信樹 (金沢大学)、 上掛利博 (京都府立大学)、 北島健一 (愛媛大学)、 杉本貴志 (関西大学)、 田中秀樹 (広島大学)、 若林靖永 (京都大学) をメンバーとして、 「研究所の将来のあり方検討委員会」 を発足させ、 検討をすすめてきました。 その活動の一環として、 個人会員へのアンケート (集計結果については4月号に掲載)、 および団体会員へのアンケート (本号に掲載) を実施しました。

その 「まとめ」 文書がまとまりましたので、 掲載します。 この 「まとめ」 文書は、 基本的なあり方に対する考え方をまとめたもので、 具体的な研究所の事業内容や組織について論じているものではありません。 この 「まとめ」 文書への意見、 あるいは、 研究所で取り組むべき具体的な事業についての提案等について、 これをきっかけに出していただき、 検討していきたいと思います。 (編集部)  


「くらしと協同の研究所」 の将来のあり方検討委員会まとめ

(2001年5月29日)

1. 研究所設立の経過と現在の課題

本研究所は 「地域住民のくらし」 と 「地域における協同活動の前進」 に寄与する調査研究組織として設立された。 研究所はその目標を 「西日本における研究ネットワークの一環としての役割」 (以上全て設立趣意書) と規定する一方、 設立には京都及びその近隣の研究者と京都生協が中心的な役割を果たした。 その後 「西日本における研究ネットワーク」 の形成に向けたさまざまな努力が払われてきたとはいえ、 この点では研究者と京都生協の関与は必ずしも十分ではなかった。 設立から10年が経過しようとしている現在、 研究所にはあらためて、 名実ともに西日本の 「地域住民のくらし」 と 「地域における協同活動」 に深く根ざした研究組織として再出発することが求められている。 その際、 設立から今日までの経過に深く関与してきた研究者と京都生協の責任が今後とも重大であることを確認しておきたい。

2. 研究所設立以後の若干の経過

まず、 設立以降、 研究活動を長い目で見守り、 支え続けていただいた京都生協はじめ、 各団体会員に心から感謝申し上げたい。 また、 本研究所が様々な活動を通じて、 生協の存在感や社会的評価を高めるのに貢献してきたことも同時に確認しておきたい。

設立時に示された、 「地域におけるくらしと協同の活動のために、 より広い視野から調査研究を行なう」 という研究所の性格は変わらないとしても、 その後の経過の中で生協の関与が一段と深まっているという事実は否定できない。 こうした現実を踏まえたとき、 研究活動の成果は直接的であれ間接的であれ、 生協の活動に役立つものであることが、 いっそう強く求められるようになっていることを確認しておく必要がある。

3. 研究所の性格

設立趣意書に示された 「協同活動をくらしの 『防戦』 におしとどめることなく、 積極的なくらしのあり方の追求や21世紀にふさわしい生活文化の創造をめざす、 より広い視野からの協同活動をもとめている」 という当時の現状認識は基本的に現在でも変わっていない。 したがって、 この 「まとめ」 では、 こうした現状認識や研究所の性格が基本的に変わっていないことを前提に、 基本的な改善点にしぼって提起することにした。

4. 現場と研究者の交流

本研究所では、 研究者のニーズと生協のニーズをともに重視し、 それらを結びつけるために努力してきた。 そのために 「現場を共有することによる理論と実践の統一」 をめざした調査研究活動を行なってきた。 しかし現場と研究者の交流が十分でないなど、 関係の改善に向けた努力がいっそう求められている。 そのためには各単協の協力とならんで、 研究者が現場のニーズを把握するための機会を積極的につくっていくことが必要だろう。

まず理事会の役割を強化する必要がある。 理事会が現場のニーズを反映させられるようにしたい。 そのためには、 理事会が、 研究テーマや研究方法論、 総会記念講演やシンポジウムの内容について注文を出して、 研究委員会が企画を考えるということがあってもいい。 また、 理事会に組合員と職員の代表を加えることも検討すべきだろう。 調査活動や常設研究会にも現場からの参加をいっそう強めることが必要だろう。

5. 最重要課題としての地域

本研究所はこれまでも、 コミュニティや地域におけるくらしや協同の実践に寄与するという意味で、 地域重視を掲げてきた。 しかし 「京都に行かないと研究所の活動に参加した (参加することの) 実感がもてない」 という声に代表されるように、 実態は地域重視にはなっていない面がある。 たとえば総会は京都で開催されなければならないわけではない。 また、 広島や島根で行われたシンポジウムの成功例に見られるように、 地域におけるくらしと協同の事例の発掘と交流に対する強いニーズがあることが分かった。 地域を対象としたシンポジウムや調査研究活動を研究所の最重要課題として位置づけることができるのではないだろうか。

6. 会員について

大多数の個人会員や団体会員の構成員である組合員や職員にとって 「協う」 がほぼ唯一のコミュニケーション手段となっている現状がある。 コミュニケーションを活発にするためには、 「協う」 と 「協う特集号」 (報告集・資料集)、 「年報」、 他のメディアを一体のものとして対策を講じる必要がある。 また 「協う」 が今後も重要なコミュニケーション手段であり続けるためには、 理事会や研究委員会が責任をもって配布状況の点検と改善、 編集スタッフの確保等に努めるべきであろう。

7. 会費について

ここでは会費の性格について基本的な考え方を整理しておきたい。 会費は、 研究所の活動を支えるために安定的であること、 組合員や職員の理解を得られるように合理的であること、 研究所の活動をコントロールするために民主的に運用されていることが必要である。 また支出面についても改善の余地は大きい。 たとえば、 事業計画については、 目的、 手段・方法、 期待される効果等が明示された個々計画について合否の判定を行なったり、 評価基準を設けてニーズの強い優れた研究に予算配分ができるように事業計画の中の競争的部分 (現行では 「研究奨励費」) を拡充することも検討すべきであろう。

以上、 検討委員会のまとめとしたい。 なお、 さらに踏み込んで 「組織変更の可能性に触れる必要がある」 との少数意見があったので併記することにした。

少数意見---組織変更の可能性について---

本研究所がめざしてきた 「現場を共有することによる理論と実践の統一」 を実現するためには、 現場と研究者が対等な立場で自由に議論していることが前提である。 そのためには、 会員が個人の資格で参加する個人会員制度を実質化する必要がある。 現行のように、 財政的に団体会員に支えられた研究所が個人会員を組織して研究活動を行なうこと自体に、 無理があるのではないか。 個人会員の参加を重視しようとすれば、 基本的に個人会員が財政基盤を確立し、 それを団体会員が支援するという姿が望ましいのではないか。 こうした個人会員主体の研究所としては、 公益を目的とし、 かつ人的結合の組織である社団法人がふさわしい。 少なくとも中長期的に組織変更の可能性を検討することが必要だろう。


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