2001年6月号
視角


「セーフガード」 の発動を求める
生協コープかごしまの運動について

平田 優


私たちコープかごしまは、 総代会議案書の 「組合員や生協を取りまく情勢」 の中で、 ここ何年か繰り返し、 現在の社会は 「オール・フリー」 で 「弱肉強食の競争社会化」 としてとらえ、 その根本的な枠組みを WTO 体制として見てきました。 それに対して 「持続可能な人間らしい市民社会」 とは 「協同の社会」 「それぞれが尊重される調和のある社会」 であり、 その実現をめざすことが協同組合の役割ととらえてきました。

2000年度の重点運動として 「食と大地と環境」 運動を進めてきました。 これは今後の持続可能な社会を求める運動として 「食の安全」 「食料、 産直の運動」 「環境の運動」 を総合的に進めようという内容です。 この基本的な考え方は2001年度の方針基調にも継続されています。

その中で昨年11月から取り組まれた運動が 「セーフガード」 の発動を求める運動です。 内閣総理大臣、 農林水産大臣 (当時) への要請書 (理事会決議文書) の送付。 「セーフガード」 問題を考える消費者・市民学習会の開催。 「頑張れ日本農業」 と題した地域農産物、 国内農産物の利用運動を主な取り組みとしたものでした (学習会の様子や講演録は、 コープかごしまのホームページを参照)。

これらの学習や運動で私たちが学んだことは

(1)そこに住んでいる人が、 住んでいる土地、 大地で収穫された農産物を食することは実に当たり前だということ

各種の政府調査では、 消費者の農産物についての国産志向は顕著です。 消費者が選択する場合の 「ものさし」 は価格だけではありません。 安全性や鮮度、 地域性=なじみというものが大切な要素、 特に農水産物では、 大切なことだと実感しています。 数値としての40%を切る自給率もありますが、 慣れ親しんだ地域の農産物が採れなくなることの危機感、 農業経営が成り立たなくなり、 農地が荒廃する危機感には強いものがあります。 農業県としての鹿児島県の生協が、 生産者と一緒に 「セーフガード」 の運動を進めることの違和感は殆どありませんでした。 むしろ、 極めて自然でした。

(2)「フードマイル」 という考えがあるように、 自分たちの要求や考えと同じ考えをする人々が世界中で増えていること

これは遺伝子組み替え作物への取り組み、 国際シンポジウムなどでも感じたのですが、 野菜というのは土壌の栄養だとか水だとかに密接に関係する自然資源なわけで、 こういうものを飛行機で遠い国まで持っていくというのは、 ずいぶん無駄なエネルギーを消費していることになります。 持続可能な社会、 環境問題をコスト化した場合、 「自分の国では自分の国で作ったものを食べよう」 という主張は合理性があるし、 世界的にも大きな運動になっています。 自分達の主張が決して偏狭なものではないんだという確信が生まれました。

(3)「セーフガード」 の発動は一時的な対応にはなっても根本的な解決にはならないということ

この4月、 ようやく政府は 「しいたけ」 「ネギ」 「イグサ」 3品目の暫定措置をとることを決定しました。 内容的には、 しいたけもネギも殆ど効果を発揮しない極めて不十分なもので、 「セーフガード」 が発動になっても、 それで日本の農業や産地が守られるというわけではなく、 何年間かの期間、 輸入が急激に増えないようにある程度の措置を取るだけで、 あくまでも臨時的な方策に過ぎません。 しかし、 暫定 「セーフガード」 の発動は史上初の政治決断です。 今後、 WTO 農業交渉に対して、 「農業の多面的機能の発揮」 「国内生産を基本にした食料安全保障の確保」 「各加盟国の食料主権を尊重する貿易ルールの確立」 を日本政府の交渉の柱にするような働きかけが必要です。

また、 根本的な解決のためには、 基盤整備も必要です。 その中で、 もっと合理的な生産という農業、 農家の課題もありますが、 消費者・生協の課題もあります。 また、 当然、 行政の課題もあります。 その一つに、 地域内で、 もっと生産と消費の関係をつくる、 ということがあると思います。 最近やっと 「地産地消」 という言葉が農協で語られだしました。 私たちの地域でも鹿児島県民向けの JA による農産物の CM も始まりました。

生協の 「よりよいものを、 より安く」 というスローガンは、 消費者の基本的な要求を示した 「矛盾」 です。 私たちは、 この 「矛盾」 ゆえに生協は発展してきたと考えています。 コープかごしまでは、 現在、 「地域」 を基本にした 「新しい産直のあり方」 を組合員、 生産者、 学識者を交えたプロジェクトで検討しています。 この中には、 地域の農産物の積極利用 (学校給食などの利用も含めた)、 生協コープかごしまらしい認証のあり方 「二者認証」、 具体的な農業支援 「援農」、 直接的な消費者による生産 「市民農園」 にまで踏み込む予定です。 組合員、 消費者の 「安さ」 への本質的要求を、 国内農業と対立させ、 二者択一をせまるのではなく、 「安さ」 への要求と 「国内農産物の充実、 自給率の向上」 を弁証法的に発展させる運動として、 今後も展開していきたいと思います。

ひらた まさる
生協コープかごしま 常勤理事


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