『協う』2002年8月号 書評2

変化する 「個」 と、 変化を求められる 「組織」
花村 二郎
研究所事務局

『囲い込み症候群−会社・学校・地域の組織病理』
太田 肇著 ちくま新書
2001年12月 680円+税

 私たちが育ってきた中で、“クラスの一致団結”“全社一丸となって”などという言葉は、 否定してはならない価値のように使われ、 意識の中に植え付けられてきた。 しかし、 その“正論”で進んできた日本社会の“病み”が様々な形で露呈し、 抜き差しならない状況を生み出してきている。 いわゆる、“いままではこうだった”という組織内のルールや社会的規範による行動が“裏目”に出だしたのが現在の社会の状況ではないだろうか。
 本書は、 「日本企業の最大の問題点は組織が個人を囲い込むことだと考えている。 注目すべき点は、 それが企業に限らずさまざまな日本の組織に共通してみられる特徴だということである」 という認識から出発している。
 全体は5つの章を使い、 その背景と現状、 そして 「どう組織と社会を変えるか」 という問題提起で構成されている。
  「終身雇用」 の形態をとってきた日本型企業が、 本来仕事をする 「機能集団」 である会社組織を、 愛社精神に意識集中させる、 生活まるがかえの 「基礎集団」 としてきたこと、 いわゆる 「個別の利害や打算を超えた貢献を引き出そう」 とする中で、 その囲い込みを強めてきた。 また、 地域の 「自治会・町内会」 も、 そこへの参加が 「権利よりも義務としての色彩が濃く、 自治の名のもとに様々な行事への参加や奉仕が事実上強制されて」 おり、 それらに順応することが、 「保護」 を受ける組織システムとなっていたとしている。 ここでは“全体”と“部分”の関係で存在する 「中間組織」 の積極面と、 「中間組織」 そのものが引き起こす、 囲い込みの弊害 (第2章) に関する展開が興味を引かれるところである。
 しかし、 「市場主義の席捲」 が囲い込みの非効率性を露呈し、 個人そのものが大きく変わりつつある現状に、 既存の組織が対応できなくなってきていることに日本のひずみの原因があるとし、 企業においても地域の各種組織においても、“参加 (意識) を強めよう”と 「求心力」 を強めるほど、 メンバーにとって組織の 「遠心力」 が働くのが現在の状況と規定している。
 これからの組織のありようを、 「個人が外部の環境に適応していくことによって結果的に組織に統合されていく」 = 「間接統合」、 「旧中間組織」 に対する 「代替セクター (NGO や NPO)」、 そして 「組織三原則=参加が任意である・活動分野が限定されている・地域閉鎖的にならない」 等の視点を提起している。 そして、 なによりも 「個人の自由と平等をいかに実現するかという、 ある意味でナイーブな問題にこだわりつづけることが必要ではないだろうか」 と結んでいる。
 広くは、“親による児童虐待死”“不信を極めさせる政治腐敗”“食品偽装をはじめとする企業不祥事”など、 社会病理的な現象の底流にあるもの、 また、 「自組織の活性化」 をどう図ればいいか、 などとお考えの方は、 一度読まれると、 何がしか整理のつく一冊となると思う。