『協う』2003年6月号 エッセイ

コーポレート・ガバナンスと協同組合
滋賀県生協連
会長 成瀬 龍夫


 世界中でコーポレート・ガバナンスへの関心が高まっているが、 その背景には、 イギリスでの新聞王マックスウェルのスキャンダル、 アメリカでのエンロン倒産問題など、 企業が世界各地で引き起こした深刻な不祥事がある。
 株主の利益は守られているのか、 利害関係者への情報公開が十分なされているのか、 企業経営の意思決定は誰が行っているのか、 役員はその責任を果たしているのか、 経営のモニタリングは誰がどのような方法で行っているのか、 こうした問題が厳しく問われるようになっている。 いまやどこの国のどの企業も、 ガバナンスを真剣に改善しないと、 グローバル経済にアクセスできないし、 他からもアクセスされない状況となっている。
 ひるがえって、 協同組合ではどうであろうか。 協同組合においてもまた国際的にコーポレート・ガバナンス改善への機運が高まっている。 イギリス協同組合連合会は全四二項に及ぶ 「最善行動規範」 をまとめたりしている。 その理念と組織原則からいって民間営利企業にくらべてガバナンスの諸条件をはるかに兼ね備えているように思われる協同組合で、 なぜコーポレート・ガバナンスを重視する必要があるのだろうか。
 この点について、 フィンランドのイトコーネン女史は、 「協同組合における権力と意思決定は、 ほとんど常に、 ほんの少数のトップの手に集中している。 協同組合運動は、 長い間、 参加や連帯が欠如しているという特徴をもってきた。 法で定められたガバナンスの機構は、 政策や戦略を検討するというよりも、 過去の業績を振り返ったり、 経営者の決定を追認するために存在している」 として、 こうした状態の改革を呼びかけている (杉本貴志訳 「協同組合のコーポレート・ガバナンスを考える」 『国際協同組合レビュー』 一九九六年一二月号)。
 日本の協同組合はどうか。 私は、 日本の協同組合はこの間、 厳しくなる経営環境のもとでガバナンスの改善に熱心に取り組んできたとはいえ、 決して十分とはいえないと思う。 最近では、 食の安全問題で協同組合が加害者の一端を担うケースもあった。 私は、 日本の協同組合も、 日本版の 「最善行動規範」 を作ることを考えたらどうであろうかと思う。