「インターネットの社会経済学」

「開かれた多元性」の中でも、社会全体のネットワーク化を議論しました。あちらは漠然とした概念的な考察でしたが、ここでは実際のインターネットで何が起こっているのかを考察しています。

とはいえ、まだまだ勉強不足なので、大したことは言えていませんが。学位論文完成後の課題ですね。


目次

  1. ネットフォビアにかかるマスコミ
  2. ネットの快感
  3. ネット消費の「質的転換」には何が必要か

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ネットフォビアにかかるマスコミ

ネットフォビア

今回と次回で、最近何かと話題になってる「ネットを用いた犯罪」とその報道に関する事を書こうと思います。

携帯電話の伝言ダイヤルサービスを使った犯罪、インターネットを用いた毒物販売など、比較的近年に出来たメディアを用いた犯罪に関する報道が最近目に付きます。

問題なのは、それらの報道のほとんどが「利用者」の問題と「メディアそのもの」の問題を(おそらく意図的に)混同し、「携帯電話やインターネットには問題がある」かの様に報道したことです。個人的には、そのメディア経験の無い人に対して誤った情報を与え、扇動しているようにしか思えません。

非常に単純な批判ですが、次の一文でそれらの報道が不十分で非常に幼稚であったことは容易に示せると思います。

「誘拐犯が警察や被害者の家族と連絡するのに携帯電話やEメールを使えば、マスコミはニュースのネタになるから『携帯電話(Eメール)は社会的な害悪だ』と批判する。しかし、今まで通り電話を用いたならばニュースのネタにならないから批判しない。」

このような「ニューメディアフォビア(恐怖症)」は最近にはじまった現象ではありません。

古いところでは、テレビ(今回では批判側でしたね)が「テレビは人を白痴化する」と批判されました。最近ではTVゲーム・アニメ(最近では数少ない国際競争力のある文化としてホメ殺しですね)、パソコン通信(地震の時には通常メディアよりはるかに貢献しました)も同様の「無知から来る不安を煽りたてる記事」にさらされました。

つい最近では、「ニュースステーション」でネット上で用いられる「顔文字」のことを「仲間内でしかわからない閉鎖的な表現」と呼んでいました。そして久米寛がしたり顔で隣の女性レポーターの手を握って「ネットではこの体温は伝わらない」と発言していました。ニュースステーションの視聴率の高さ、国民へ与える影響の大きさが全くわかってないとしかいいようがありません。

・・・これ以上書くと感情的になるんで止めます(笑)

このような恐怖症は、単純に言えば「世代対立」です。環境の変化に適応出来ないが、社会的権威もしくは権力のある古い人が、その特権的地位を利用して「一人よがりの意見」をあたかも「まっとうな正論」であるかのごとく流しているだけです。良識のある人々からはそっぽを向かれてることを切に願います。

◎コメント
最近のTVは、新しいメディアやネットワークに対する評価能力が欠落している気がします。情報を発信している人が実は最新の現実を知らないと言う典型なのでしょう。

人間は誰しも自分の周囲の現実しか経験できませんが、それ以外の部分を「想像」で感じ取る能力が必要です。報道は、もっとも想像力が要求される職業の一つであると思うのですが・・・

余談の余談ですが、「ニュースステーション」は「ニュース報道を多くの人に身近にした」という「歴史的使命」を終えたのではないでしょうか?
現在では「キャスター・コメンテーターの独善的な意見を撒き散らす社会的害悪」の側面が強くないでしょうか??

ニュース報道は、原稿を読み終えた最後の数秒のキャスターの独り言でニュースの印象ががらっとかわります。「最後の一言」と言う武器をもっとも多用するニュース番組が「ニュースステーション」なのが気になります。

NEWS23の「多事争論」の様に、キャスターのコメント部分はしっかりと分けるべきでしょう。

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アクセス容易性と自己責任原則

前回はあくまでも悪いのは悪用する人間であり、メディアとしてのネットワーク自体には悪がないという点を確認しました。

しかし、「使う人の良心の問題」と完全に無視してもいいのでしょうか?自分は良心に従い、何ら悪い行為をしなかったとしても、他の利用者が悪意を持っていたとすれば何ら意味がないのですから。

一つ例を挙げてみます。

アメリカの拳銃所持とそれが引き起こす問題は良く知られています。多くのアメリカ人の意見である、「銃は自衛のために保持しているのであり、犯罪のためではない。使う人の良心の問題だ」という発言に、「割り切れない何か」を抱く事もあるかと思います。

ネットワークと拳銃、この二つに共通して潜む危険性は何でしょうか?それは、「アクセス容易性」です。

誰かと口論になり、相手に対して敵意を抱いたとします。その時完全に「キレた」状態だったとして、もし拳銃を持っていたら撃ってしまうかもしれません。

ネットや伝言ダイヤルでも同様です。発作的に死ぬための薬が欲しい、と思ったとしても普通は手に入りませんでした。ネットや伝言ダイヤルを使えば出来てしまうのです。

このように冷静な判断が出来ない状態になってしまった時に、容易に後戻りが出来ない行為をしてしまう可能性があるために、双方ともに危険なのです。

それでは、ネットに法的な規制は必要でしょうか?僕は不必要だと考えます。それは、ネットワークの書き込みならば修正が可能だからです。薬を購入したとしても、届くまでの間に冷静に帰れる時間があります。

それに社会構造的な問題もあります。ネットワークを用いずに自殺をする人は何人もいます。自殺に失敗して何度も何度も自殺を試みる人もいます。そういった人達は、ネットワークとは関係なく社会構造的に一定割合で存在しています。

伝言ダイヤルの問題も同様です。異性と知り合うきっかけが乏しい人は一定割合で存在しています。伝言ダイヤルの代わりに「ねるとんパーティ」を使ったり結婚相談所を使ったりしてるだけのことです。

これらの問題はネットを規制しても他の方法で達成されるものです。そのような問題のためにネットを規制するのは無意味です。

個人的には、一番の解決方法は個人の対応能力の向上と信頼できる人による「情報の編集」だと思います。

言い換えると、見極める能力を徐々に高めていくことと、信頼できる機関によって「お勧めサイト」情報を公開してもらうことが重要だと思います。

ネットにせよ、伝言ダイヤルにせよ、見知らぬ相手に対してすぐに連絡先を教えたり、もらった薬を飲む、というのはそういう事をする方に問題がある気がします。そういった「見極め」能力を付けるべきでしょう。(これは教育の問題かもしれませんね)

また、ネットワーク上はまさに玉石混淆です。Yahooのような登録制の検索サイトが一種の内容保証機関となって、信頼でき、それなりの質を持ったサイトのみを紹介するようにすればいいと思います。

インターネットを情報収集にしか用いない人はテレビのチャンネル感覚でそこから情報を得ればいい訳です。

個人的には、学歴・所属・出身などの社会的立場を完全に無視した、匿名(ハンドルネーム)でしか出来ない会話や情報発信があると思いますんで、公的機関の規制は避けたいのです。

その代わりに、保証されてないサイトを利用する時にはそれなりの危険性があることを踏まえた「自己責任」原則で処理して欲しいと思います。

◎コメント
結局どのような文章を書いても「自己決定能力の育成」と「自己責任原則の徹底」、「環境整備」にオチがなってますね(^^;)ワンパターンと言えばワンパターンですが、一貫しているといえば一貫しているのでしょう(笑)

ネットに関して言えば、前回述べた「関与」の度合いで好きなレベルで関わり合えるのが一番の魅力だと思います。しかし、「とりあえずネット」と言う理由で始めても、「何が有用か」「何が楽しいか」がわかりにくいメディアだと思います。

さらに言えば、「自分で楽しさを見つける・作り出す能力」がないとあまり面白くないメディアかな、と思います。それこそアダルトサイトで裸を見て、知り合いにメールを出して終わりになりかねません(笑)

逆にいえば、自分で楽しめる人には自分のコンピュータ力量の範囲内でそれなりに楽しめるメディアです。家に帰ったらナイターとビール、しか
楽しみのないようなあまりアクティブでない人には大変な時代が来てるんでしょうね(笑)


ネットの快感

▼アンケート結果の紹介&僕の問題意識▼

今回のアンケートは18人の方に答えていただきました(前回より減ってしまいました^^;)。

個人的な関心の一つは人それぞれの「ネットの快感」にあたる部分です。具体的には、ネット未経験者に対して広告メディアが的確に「快感」を伝えているかが知りたかったわけです。

もう一つの関心は、みんながネットをする「場所」にありました。特に、多くの電器メーカーが何度もチャレンジしてミスしている、「家庭の居間に情報端末を置く」と言う野望(笑)が今度こそ成就するのかを中心に、今回の質問を構成してみました。

ビジネスツールとしてのインターネットの効用は既に大量の文献がありますので、消費に軸足を置いて分析したいと思います。

先にお断りしておきますが、僕は通信技術・ソフトウェア的なことはあまりわかりません(笑)

日常的な作業にアプリケーションを使うには困らない、パソコンの自作経験があるヘビーユーザーによる分析と思ってください。

2回に分けますが、過去最高の分量になってしまいました(汗) 普段の文章と比べると徒然なるままに書いてる度合いが高いので、気軽に読み流していただけると嬉しいです。

◇◆アンケート回答者の基本データ◆◇

(性別) 男性:15人 女性:3人
(年齢) 10代:1人 20代:10人 30代:4人 40代:3人
(職業) 学生:9人 会社員:8人 自営業:1人
(出身地)北海道:2人 関東・甲信越:6人  東海:3人 近畿:3人 中国:1人 九州:2人 その他:1人

◆◇回答の集計とコメント◇◆

後々の解説の関係上、5)の解説から始めます。分量的に非常に長いため、関心の前半にあたる5)の解説部分のみになることをお断りしておきます。

5)インターネットを通じて出来ることで、「これはよかった」と思うことを自由にお書きください

人数的にそれほどありません(15人)ので、書いていただいた方の全員の意見を掲載させていただきます。マーケティング資料にどうぞ(笑) (長いため一部編集させていただいた意見もあります)

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「就職活動時、企業のホームページを見て情報を手に入れたり、資料請求を出来たこと。」(20代学生、女性)

「同じような趣味や価値観をもっている人を探すことができたとき(それどもあまり簡単とは言えない)」(30代会社員、男性)

「国際電話を使わず文書のやり取りが可能なこと。いちいち国際電話では不経済なんですよね」(30代の休職して留学中の会社員、男性)

「1.世界中に友人が出来た(笑) 2.自宅でも会社に居るのと同じように仕事が出来るようになった(T^T) 3.Hな写真がタダで見れた(笑)」(30代会社員、男性)

「かなりの情報と寸評を多面的に拾えます。情報管理がし易いです。」(40代会社員、男性)

「テレビでは得られない情報を得ることができる。こないだの臨界事故でも、インターネット上の掲示板の情報に対して一番共感を覚えた。」 (20代学生、男性)

「電話でしゃべるのが苦手で、文章を書くのが好きな私は、けっこうメールで救われた。あとおねーちゃんと仲良くなれた(笑)。」(20代学生、男性)

「1.情報を売る業界に「競争」が導入されたこと。 2.個人が世界に向けて情報を発信できるようになったこと。」(20代学生、男性)

「情報収集が容易にできることでしょうが、基本的に営利企業を除いて情報発信は個人の裁量とGIVE AND TAKEの精神によるところに、特に「情報の質」については少々疑問を持っています。」(40代会社員、男性)

「メルマガが読める!メルマガの著者に気軽に意見・質問が出来る。本や雑誌よりも、安価で、小さいスペースで、コンテンツを入手できる。」 (20代学生、女性)

「旅行中(国内・海外)に知りあった知人や遠方の友人に気軽に連絡がとれること」(20代会社員、男性)

「暇潰しコミュニケーションで淋しい人(現代人)が助かってる点。故に、世俗化社会の聖なる飛び地となってる。」(20代学生、男性)

「世情がリアルタイムで入ること。例えば、テレビ・ラジオ報道される前に事実を知ることができる。 スポーツ情報や、気象庁発表の予報。メーリングリスト。埋もれた意見が発見できること。東芝問題や自動車のサポート問題、校長のいじめ対策など。自分の持つテキストデータの有効利用。ホームページ作製やメール交換。相談相手を見つけること。 ペンパル。  などなど」(10代学生、男性)

「う〜ん、思い付きません。」(30代会社員、男性)

「メールで、遠くの人とも話ができる。自分の考えに近い人と、顔を合わせずに言い合える」(20代学生、女性)

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ネット消費のいくつかの傾向を抽出してみましょう。コメント&現状解説もつけてみます。

1:資料&情報収集に便利

僕自身の経験で言えば、図書館まで行かなくても図書館のホームページから文献を検索できるので、実際に足を運んで調べてみたけど文献が無かったという「無駄足」が無くなりました。

新聞のスクラップ等の資料収集を習慣にしている人は、紙が変色するなどの質の劣化が存在せずに容易にコピーを作成したり再利用したりできるデジタルデータでの資料収集は便利でしょう。特に最近ではリアルタイムで情報がアップされるようになったので、われわれが最新情報を入手できるメディアになっています。

しかし、マスコミに載らないような「優等生で無い意見」も多面的に拾える代償として、インターネット上で手に入る情報はまさに玉石混交で、いい情報を入手するにはそれなりのセンスと経験が必要です。まさにトレードオフ(一方を重視するともう一方がおろそかになると言う関係)ですので、各人の関与度によって一次情報・二次情報・・・ETCのどの段階の情報まで検討したいかで判断してもらう必要があります。

現段階ではネットはあくまでアクティブな人々が関わりあって自発的に運営されているメディアです。TVの様にボーっと眺めているだけでそこそこの「品質保証」された情報が流れてくるわけではないことは強調しておく必要があるでしょう。

2:安価・気軽なコミュニケーションツール

メール・WWW・FTPをインターネットの3大機能と呼んでいいでしょうが、特にメールは公私ともどもで頻繁に利用され、「なしの生活に戻れない」と言う点では電話並のライフラインになるでしょう。

(僕の場合では(当然ながら)メールマガジンの発信が挙げられます。861人(前回発行時)に数十円の通信費だけで文章を発信できるのですから。)

3:グローバルな地理的規模でローカル&パーソナルなコミュニティが形成できる

フツーの個人が作成した音楽・CG・小説・フリーウェア等を紹介&アップしているページはネットサーフィンすれば容易に発見可能です。また、特定の話題のBBS(掲示板)メーリングリストも多数あります。チャットも盛んです。

日常生活の中では見当たらない、趣味や価値観が近い人々を容易に見つけられるのはネットの利点の一つです。特に学歴・職業と言った世俗の立場や利害と無関係な関係を築けると言う点では現代社会のアジール(聖域:民俗学用語)化している面があります。(悪い言い方をすれば「テレクラ」の代用品なんですけどね^^;)

「フレーミング(掲示板・チャットでお互いに罵り合うこと)」は人々の話題に上るほどには発生していない様です。既に「フレーミング」の概念が十分普及しており、各人が用心している事が挙げられます。少なくとも「食わず嫌い」で「ネットなんて・・・」と言う人が考えるよりはよっぽど少ないでしょう。

まだまだ発展途上のメディアであり、「ネット初心者」が常に供給され続けている現状では、(オンライン・オフライン双方で)初心者に経験者がコンピュータ操作法・ネチケット・面白いサイトなどを指導することが重要です。この過程で社会と同様に、徐々に「秩序」が発生して行きます。ネットは無法地帯ではなく、明文化されていない「掟」(古めかしいこの言葉がピッタリです)の支配する小さなコミュニティーが少しづつ重なりながら全体を覆う社会です。

この点では少しずつ「隣人」「世間」が異なる各人のネットワークが織り合わさる様にして出来あがっている「現実社会(ここではコンピュータネット
ワーク以外の社会の意味で用いています)」と何ら異なることがありません。

ネット上(サイバー社会)でのコミュニケーションは基本的に文字ベースのため、シャイだとか、人前でどもってしまう等「音声・表情ベースの対人コミュニケーション」が苦手な人には「自分の居場所」が出来ると言う福音になるでしょう。しかし、約束を守る・人々を公平に扱うなどと言った「普遍的な社会的技能」は変わりませんので、現実社会で人望が無い人はネットでもダメ、と言う場合が多いと思われます(笑)

4:フリーソフト・シェアウェア・違法データなどさまざまなデータの流通

パソコン通信の時代から、ネット内コミュニティーでは多くの人からのレスポンスを受けながら、「ワイガヤ(HONDAの自動車開発の現場を示した言葉です)」の状態で多くの人が関わりながら作成します。その結果は無料や低額で(他の企業が持ってる技術の使用料のみの場合も多いです)アップロードされます。これはまさにコミュニティです。

しかし、このような「いい関係」だけではないことも事実です。アンケートでは冗談半分にアダルト画像が上がっただけですが、音楽CDから抽出して作成したMP3データや、市販ソフトのデータを丸ごとアップロードしている場合まで、さまざまな場合があります。(既存の秩序をすべて批判するハッカー文化、とも言えますが^^;)

この違法なデータはファイルサイズが大きい場合がほとんどであるため、現在のネットの混雑の最大の原因の一つと言えるでしょう。

逆説的に言えば、ネットの通信環境(通信速度・通信費用)が不自由だから今ぐらいのレベルでとどまっているとも言えます。何の対策も取らないままで通信速度だけ速いシステムに移行したとすると、映画を丸ごとMPEG2ファイル(DVDの画質フォーマットで、VHSより数段きれいでLD並と言われています)でアングラサイトがアップする事態になると思います(笑)

☆結論(1)

現在のネット消費は非常にパーソナルな消費であるとともに、非常に関与度が高い消費である。ネット消費の「質的変換」を遂げないとネット人口の増加はあってもネット端末としてのパソコンの「平均稼働率」は低下しつづけるだろう。

少し気ままに書きすぎました(^^;)一応の全体を特徴付ける結論とともに、最初に書いた問題意識に対する現段階での暫定的結論を書いておきます。

SOHOの手段としてネットと関わる人にとってはインターネットの存在は「文字の出る電話」「受信側がデータの再入力の要らないFAX」「安価かつ迅速に文書が発想できる郵便」と言ったところでしょう。これは「ヨリ速く、ヨリ便利、ヨリ安価」と言った技術発展の自然な一コマにすぎません。適応できないところはコスト面での不利さから淘汰されるだけの事です。(個人的には以外でも何でも無いのでさほど関心が無いです)

しかし、現段階でフツーの消費者がネットに関わるべき理由が無いのです。あえて言えば、他の人に何か伝えたい、友人を増やしたい、他の人から何かを感じ取りたい、と言う「積極的に関与したい」人だけがネットに「参加」していると言っていいでしょう。

この「ネットの快感」の消費者予備軍はまだまだ存在するとは思いますが、現在ネットに関わっていない多くの人の関与度は低いと思われます。一種の「高機能電話」として端末が徐々に家庭に入ってゆく事は確実であると思われますが、稼働率には非常に個体差があると思います。

現在までに普及した機械の中では、ゲーム機の利用形態(毎日電源が入るヘビーユーザーから、話題の大作のみをプレイするライトユーザーまでさまざまなユーザーが存在する)に近くなるものと思われます。これでも十分大きなビジネスですが、「社会生活が一変する」ほどではないと思います。

また、ネット消費が参加・関与型の消費であると言う事は、非常にパーソナルで、家族にも見せたくない(見られたくない)自分の側面をネット上で見せてると思われます。このような消費が主体の状態で、ネット端末を家庭の居間に置かせようという戦略には無理があると思われます。

家庭の居間にネット端末を置かせるためには、現在のTVの様に利用者側の参加・関与の度合いを低下させる必要があると思います。音楽や映像のオン・デマンド配信や、ソニーがPS2を用いて考えているe-distributionと言ったビジネスの対象となる顧客と、現在のネット参加者が重なっているかどうかは疑問です。

・・・まぁ、これは僕の考える仮説に過ぎませんので、もしネットを利用してビジネスを狙っている人はあまり気にしないでくださいね(苦笑)


ネット消費の「質的転換」には何が必要か

▼はじめに▼

今回は前回に続いてアンケートの集計結果です。前回ではインターネットを「何に利用されているか」から議論しましたが、今回はインターネットを普及させるにあたって「ネット消費の質的転換には何が必要か」を中心に議論します。

あまりに長いので(汗)、内容のアブストラクト(要約)をつけます。半分目次みたいなものですので、面倒な方はここをみて面白そうなところだけ読んで下さい(^^;)

▼▽アブストラクト(要約)▽▼

[1]低関与者を巻き込むにはネット消費の「質的転換」が重要
[2]消費の質的転換には次の4つのハードルがある
 1. 初期投資の低下&ランニングコストの低下
 2. 端末の操作・コンピュータの基礎知識の普及
 3. コンテンツの充実・通信速度の向上・著作権保護
 4. 情報のセキュリティ
[3]高くて敷居の高いパソコンにこだわる必要は、実は無い

結論:ブレークスルーは高速インターネットから!

◇◆アンケート集計◆◇

1)インターネットには何を用いて接続しますか?(複数回答)
  WINDOWSマシン:15人
  Macintosh:3人
  UNIX(PC‐UNIX含む):2人

  携帯(iモード):1人

WebTVやドリキャス等のTVをモニターに使うネット端末がどれぐらい普及してるかを見てみようと思ったのですが、ゼロでした(苦笑)。

2)普段「経済学研究室」を何を用いて読んでますか?
  WINDOWSマシン:15人
  Macintosh:3人
  UNIX(PC‐UNIX含む):2人

「メールを何で読みますか?」と書く代わりに上のような表現にしたのですが、1)と全く同じ結果でした。モバイルが何人かいるかと思ったのですが、少し以外な結果でした。これは「経済学研究室」ぐらい長いメルマガ(^^;)が「家で読むもの」だから、と言うこともあるかと思います。

3)家の中でパソコンを置いてある場所はどこですか??
  居間(ワンルーム含む):6人
  自室:10人(仕事部屋7人)
  ノートをあちこちに持ち運ぶ:4人

この設問は少し失敗しました(^^;)「一人暮し」と「居間」の項目を明確に分けるべきでした。回答の雰囲気からすると、ワンルームの方が6人の中に数人入っている様です。

4)日本のインターネットがこれ以上普及するには何が必要と思いますか?
 (二つまで回答)

A. 5万円かそれ以下で手に入る安価なパソコン:4人
B. 今まで以上に操作が簡単なブラウザー、メールソフト:5人
C. 通信費の値下げ:15人
D. ケーブルテレビ接続や通信衛星などの、ヨリ高速な通信環境:5人
E. 万全なセキュリティー:1人
F. アダルトサイト、アングラサイト等の有害サイトの追放:0人
G. その他:6人

◆◇解説&コメント◇◆

[1]低関与者を巻き込むにはネット消費の「質的転換」が重要

設問1)〜3)で明らかになったことは、「ネット消費の主流は、自室で、パソコンで、行う形態」と言う事です。この結果は設問5)について議論した、前回の結論である「非常にパーソナルで、関与度の高い消費」と整合的です。これを消費Aとします。

ネット消費をもっと一般的にするためには何度も述べている様に低関与者を巻き込む必要があります。単純に言えば、情報端末+通信販売端末+オンデマンドで「眺める」映像メディアを供給する装置、と言ったところでしょうか?時間の消費対象としては地上波のTVと競合する面が強いです。こちらを消費Bとします。

Webとメールが主流の現在のネットは「読む」メディアと言っていいでしょう。解像度の低さと、画像のにじみを前提として考えると、一画面に出せる文字数は非常に限られますTVをモニターとして用いる、と言う方向性はデジタル出力で高解像度のTV(次世代のTV)が十分普及するまで無理があると個人的には考えています。このあたりは現状のTVでも十分モニターの代用品になるアルファベット主体の国々と大きく異なるところです。

通信販売端末にせよ、映像供給端末にせよ、大きく普及するには通信速度の高速化と通信価格の低下が不可欠です。上記に挙げた目的でネットを消費する人が比較する基準は安価に入手でき、(電気代を除くと)無料で視聴できる地上波のTVですから。

現在ですでにインターネットは、ビジネスを物流過程・情報通信・製品開発を中心として大きな革命をもたらす事はほぼ確定しているといいでしょう。しかし、これまで以上の多くの消費者を巻き込んで日常生活を大きく変えてゆけるかはまだ確定しているわけではない、と言っておきます。

[2]それでは、どういったシナリオで消費革命は起こるのか??

日本のマスコミの特徴(笑)である、「これからは〜だ!」「〜を理解できないなんてもう古い」と言う「脅迫型マーケティング(笑)」に反旗を翻して、「ネットが消費者に定着するかはわからない」と書いたわけですから、もう少し具体的に「消費の質的転換へのいくつかのハードル」を述べます。

具体的には、設問4)にいれた質問が僕の考えるハードルなのですが、コメントをつけてみましょう。

1. 初期投資の低下&ランニングコストの低下

インターネットを始めるときの困難のひとつが「初期投資が高い」事ではないかと思います。特に、最初は使いこなせるかどうか、何が楽しいのか全くわからないモノへかけられる金額の上限は5万円ぐらいじゃないかな?と思ったので設問A)を用意しました。

「ムリョーパ」と言う無料パソコン配布サービスがありましたが、初回1万台募集のところを45000人の応募があったといいます(『週間アスキー』1999年9月8日号)。この事からもパソコンへの「初期投資」を高いと思っている層がかなり存在する事が伺われます。

前回述べたように、現段階では非常にパーソナルな営みがネット消費の主流です。消費形態が変わらないならば、ネット参加者が増えるためには「一家に一台」的な価格帯から、「一人に一台」が可能な価格帯へと下げてゆく事が不可欠です。この結果、仕事や教育現場でネットを利用し始めた人が家庭にも端末を置き、仕事・勉強への利用の「おまけ」として消費Aを開始すると言うシナリオが現実的なのかもしれません。

しかし、このシナリオであっても、最も多くの人が指摘した様に、通信費(電話料金+プロバイダ料金)の問題は深刻です。消費Aはダウンロードが消費形態の大きな部分を占めるだろうからです。インターネットは既にビジネスに不可欠の「産業インフラ」化しており、産業の国際競争力の面でも通信費の低下は早急に達成される必要があります。

(インターネットも含めて、公共料金を「独占企業の金の成る木」にしてしまう行政・政治・経済システムは問題ですよね(笑))

2. 端末の操作・コンピュータの基礎知識の普及

コンピュータの基本的操作・概念がまだまだ一般の人に「敷居が高い」のではないかと思います。設問B)を選択した人が5人いるということは、実際に大変なのか、もしくは多くの人にとって大変だろうと思っている事を示しています。

これからのネット普及の鍵(もしくは問題点)は、間違い無く中高年にあります。彼らにはコンピュータについて学ぶ機会が非常に少ないからです。

大学生は就職活動時にネット経由のエントリーが主流になってきています。学生にとって、ネット経由のエントリーは「最低限の操作は出来る」シグナルになるため、半強制的にマスターします。また、詳しい人が周囲に存在する可能性も高いです。中学生・高校生は学校教育のカリキュラムにコンピュータが加えられてゆくので問題はありません。こういった流れに教育年限を過ぎ、周囲に詳しい人が居ない中高年は参加できないのです。

文盲率の低下(=識字率)の普及が経済成長にとって一つの鍵であることは開発経済学の常識です。通常初等教育の普及によって労働の質が上がる事が強調されますが、初等教育を修めることで、さまざまな欲求への扉が開かれる事(=需要が発生する)も無視できません。コンピュータの基本概念・操作も同様な一種の「現代的初等教育」と考えると、中高年者が教育を受ければ発生するはずのさまざまな派生需要は計り知れません。

この様に、コンピュータに関する基本的な概念が普及する事は非常に外部経済効果が高い(詳しくは創刊連載の「教育」を参照)ので、現在の様に必要に迫られた中高年者が「ゲリラ的」に学ぶのではなく、もっと積極的に政府が関与して一斉教育をしてもかまわない気がします。

(さらに言えば、各家庭に一台端末を配って学ぶインセンティブを与えるのがいいのではないかと思います。インターネットではないのですが、 フランスではミニテルと言うキャプテンシステムの端末を配布したことがあります。同じ事が出来ない訳は無いのです。変な公共投資よりよっぽど経済効果があると思うんですけどね(笑))

3. コンテンツの充実・通信速度の向上・著作権保護

アダルトコンテンツを中心としたマイナーでアンダーグランドなコンテンツは「普及にはプラスでは?」と言う意見をいくつか頂きました。これまでの実績からして間違い無くプラスなのですが(笑)、教育機関や居間に設置するときに保守的な人が「食わず嫌いを正当化する十分な理由」になりうると考えて、設問Dを用意しました。さすがに現在ネットを利用中の人はこういったナンセンスな事は言いませんね(笑)

非常に重いデータである画像を受信する事が重要(笑)と言う意味では、現在のアダルトコンテンツは消費Bの普及のためのテストを勝手にしてくれていると言えます。数十キロバイト〜数百キロバイトの画像データを、大量に(笑)、電話回線でダウンロードするのが大変である事はメールでデジカメ写真をやり取りした事のある人ならすぐにわかると思います。ましてや動画は、です。同様に、1分1メガバイトぐらいの大きさのMP3ファイルのダウンロード販売もまだまだ大変です。一般加入者の通信速度の向上、それも出来れば2桁以上の向上は消費の質的変換に避けて通れないハードルです。

通信速度の向上が果たされたときには、著作権保護がこれまで以上に重要になってきます。現在でもMP3ファイルが問題になってますが、逆説的に言えば通信環境が今ぐらい劣悪であるからこの程度で済んでると言う事も出来ます。動画発信が容易な通信環境が普及したとすれば、現在はまだポピュラーでないWAREZ(市販ソフトの中身をそっくりそのままネットでアングラ発信する事)が一気に社会問題化する可能性があります。

著作権保護と通信速度の問題がクリアーされるまでは、現在実験中の「マルチメディアキオスク」の様な形が現実的かもしれません。速報性が重要で違法コピーするインセンティブの小さい新聞記事や、著作権情報を電子署名した音楽コンテンツなどCFカードなどにダウンロード販売する方法です。高速通信網でコンテンツを店頭まで発信する事でソフトウェアの生産リードタイムの削減出来る一方、機会損失(在庫を持たなかったために販売できなかった需要)をなくす事が出来るので、比較的成功しやすいからです。

4. 情報のセキュリティ

男性読者が多く、まだまだネット通販がポピュラーでなかったために回答は少なかったですが、個人情報のセキュリティはこれから非常に重要です。

経済取引のためにクレジット番号の安全などは当然ですが、サイバーストーカーが発生しない、若い女性が安心してネットに参加できる環境が重要です。

ここで一番の問題は、個人情報を保護する法律が整備されてない事です。一つ事例を挙げます。

DDI東京ポケット電話で働いていた人材派遣会社のアルバイトの男(24)が、加入者の住所・名前・電話番号・料金支払い状況などを会社のコンピューターからプリントアウトして興信所に一人1万円で売った。10月15日に彼は逮捕されたが、逮捕容疑はなんとオフィスの用紙の窃盗。現行法では形の無い情報データに財産性は無く、改ざんも無かったため他に捕まえる理由が無かった(「週間アスキー」1999年11月19日号)。(もし彼がNTT社員ならば「みなし公務員」なので、このようなケースでは収賄罪が適用できます。念のため。)

同様の事はプロバイダでも起こり得ます。もし情報を盗難する人間が保存メディアを家から持参しており、家でプリントアウトしていたとしたら、どんな容疑で逮捕できたのでしょうか?非常に不安です。

[3] 本当にパソコンが必要なのか?

少し僕の素朴な疑問を。

[2]の最初の2つからわかる事は、「まだまだパソコンは高価で、操作が大変なモノである」と言う事です。パソコンはソフトウェアによっていろいろな出来る汎用性を持っている事が、これまでの家電と大きな違いです。各ソフトウェアの利用時にも個人の使用法にそってさまざまなカスタマイズが出来ます。しかし、この「自由度の高さ」がどこを触っていいかわからない「敷居の高さ」になっています。

機能をネット関連に限定した、現在のWeb端末を改良したモノで十分ではないのでしょうか?解像度の面からWEB端末には問題がある、と既に述べましたが、それ以外にも大規模記憶装置がついていないと言う欠点があります。現在のWeb端末ではせいぜいメールとよく行くホームページのデータをキャッシュする程度の記憶容量しかないのです。ダウンロードデータを保存する大規模記憶装置は必須です。

(DREAMCASTがZIPディスクの発売を検討していたり、PS2がHDDを接続できる様にi-Link端子を用意しているのはその布石です。)

画像表示を充実させ、大規模記憶装置を取り付けた上で、機能を絞り込んで安価(モニター込みで4万円以内)で使いやすいWe4端末が出たら可能性が出てくるとは思うんですが・・・

(ただし、現在パソコンを操作できている人はほとんど手を出さないと思います。Web端末にはパソコンに感じられる「何でも出来る魔法の箱」を 言う幻想(笑)を抱けないからです。あくまでもパソコンに拒絶反応を持つ人向けの商品になるでしょう。)

☆結論(2)

ブレークスルーの第一歩は広帯域で高速なプロバイダの普及にある・・・はず

暫定的な結論を書いておきましょう。マルチメディアキオスクと言った家庭内に入らない形はのぞくと、ネット消費の質的転換には次のようなプロセスが現実的(既に動いているルートでもありますが)ではないでしょうか?

まず、CATVや通信衛星、ADSLと言った広帯域の高速通信ネットワークが安価で家庭内に入り、「重い」コンテンツが消費される基盤が整う。その後、既存のネット消費者の中でこれらのコンテンツへの需要が高まり、産業として成り立つ十分な需要が発生する。消費者の反響・時期を見て(先ほど述べた条件を満たす)Web端末の需要が高まり、消費の「質的転換」が完了する。

セキュリティーの充実はビジネス分野で早急に求められているので、このタイムスケジュールの足を引っ張らない時期にある程度成功しているのではないでしょうか?


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